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* * *
翌日から。
昼は軍務と軍議の合間に後宮に顔を出すだけの、アロがいなくなった日常に戻った。
その夜。
アロに「3日後に国へ発つ」と言われ、「わかった」と返した。
彼は終日、寝たり、庭で休んだり、長風呂をしたりと気ままに過ごしていたようだが、席を共にする夕食の間は変わらず顔を伏せたまま、俺を見ようとはしなかった。
その翌日も、翌々日も、アロの様子は変わることはなかった。
そして、彼の出立前夜のこと。
寝所に入り、うとうとしかけた時だった。何者かが侵入し、静かにこちらに近づく気配に目を覚ました。
“そうするだろう”とわかっていたが、女々しい未練を断ち切るためにも、受け入れる気はなかった。
「…女でもなければ立ち入りは禁止だーーー」
「ガイ様は、お許しくださいました…」
「………」
薄闇の向こうから音もなく現れたアロが、寝台の手前で跪(ひざまず)いた。
「…何か用か?」
「貴方の奴隷に、罰を、お与えください…」
小さな声の感情は、見えない。
「…なんの咎(とが)で?」
「貴方が、手を尽くしてくださったのに、私はーーー」
「へそを曲げて、言葉もろくに交わさないまま…」
床に這いつくばるように平伏した男との距離は、縮まることはない。
「仕方ない、お前は俺の顔など見たくないのは承知だ」
「…罰を与えられないのならば、せめて」
「…」
「せめて、身勝手な我儘をーーー」
「全て、お前を手放す覚悟でしたことだ」
「…」
「…出ていけ」
「………」
力なく立ち上がったアロは、顔を背けたまま、おもむろに夜着の帯を解(ほど)いた。
肩から腕、上半身から腰へ。薄暗がりに、微かな衣擦れと共に露わになる体は、白く、淡く、眩(まばゆ)い。
「最後に、もう一度だけ…」
夜着を床に落とした手が、毛のない恥丘を侘しく撫でる。
「貴方に、癒やしてほしいのです…」
寝台を降りて、アロに吸い寄せられる俺の股間は、痛いほど勃っている。
「…俺を見て、言え」
ぎこちなく俺を見上げたその表情(かお)は、切なく躊躇(ためら)い、赤らんでいた。
「アーサー様、どうか…どうか私を、癒やしてくださいーーー」
「慰めるだけだ」
アロの腕を引き、寝台に突き倒して、円卓の水差しを取った。
「…脚を開け」
水差しの水を床に捨て、空にしたそれをアロの脚の間に放った。
「それに小便しろ」
「……っ」
羞恥に唇を噛みながら。しゃがんだ腰の突き出したそこは、既に赤く膨れている。
幾度となく愛でた男根の痕は、ひと目見れば俺を求めて疼いているのがわかった。
「しろ」
「…はい」
じょろ、と溢れ始めた尿が、勢いを増して水差しに溢(こぼ)れ出す様と、泣き出しそうな表情(かお)を凝視する。
「う、ううっ…」
喉で呻き、体を震わせながら。じょ、じょと勢いよく尿を吹き出す体の芯で、恍惚が弾けていることを知っていた。
「う、く…っ」
尿が切れたそこは小さく口を開けて、ひくつきながら俺を乞う。
「あーさー…さまっーーー」
「もう十分だ」
ゆらゆらと俺にすがる手を振り切ると、甘く濡れた目が狼狽(うろた)えた。
「…あーさー、さま?」
「もう二度と、お前に触れることはないと思ってた…」
「…っ」
「なのに、どうして欲しがる!?」
「どうか、おねがいですーーー」
「だめだ!お前を手放せなくなるーーー」
「あの幸せはっ…」
「…」
「あれは、嘘じゃなかったと思いたいっ…」
胸を裂く悲痛な声に背を向けることができなかった俺は、アロを抱いた。
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