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* *
気がつくと、吊るされていた。黒い布で括られた両手が天井から吊った鎖に結わえられて、なんとか立っていられても、膝をつくことはできない。
「…なっ、にーーー」
「あぁ、痛かったら言ってください」と僕の右膝にロープを通して吊り上げたテイラーは、「貴方のエクスタシーを撮り逃したのが惜しくて」とひどく残念がった。
「決してSMみたいなことが好きなわけじゃないんです」
そう言って足元に跪(ひざまず)いた彼が、僕の陰部をまじまじと観察する。くたびれたディックとタマを嗅いで、「これが貴方のニオイなんですね」と目を細める男にゾッとしても、腿をくすぐる吐息に体は熱くなる。
そして、今度は本物の型のディルドを僕のケツに突き挿したテイラーは、「いい眺めです」とカメラを覗いた。
自由の効かない体を攻め上げる玩具とシャッターの快楽は激しく、《背後の彼に抱えられて》なおさら身動きが取れない。
「あ、アッ、あ゛、ィやだーーー」
快感にもがく体に、ギリギリと軋む鎖の音が食い込んだ。《背後の彼が、「汗も綺麗だ」と脇腹から胸を舐め上げる。》
カシャッ、カシャッと突かれるだけで奮い立つディックが、早くも先走りを垂らしている。
「どうですか?男のペニスは…もしかして、慣れていますか…?」
含み笑いで僕を抉(えぐ)る男のぎこちなさが、かえって体を震わせる。
「…ざけん、なーーー」
「こういうことが初めてなら、ますますイキ顔を撮り逃したのが惜しいです…」
《くつくつ笑う彼が、「貴方の素質(こと)はわかってた」と胸に吸い付いた。》
「あ、アア、あ゛あッーーー!」
ゴリゴリと擦(こす)る快感が早くも弾け飛んで、僕は体を捩(よじ)って昇天する。再び朦朧とした頭には、手首を締める手枷の痛みすら甘い痺れになる。
「…とても、とても素敵です…」
カシャッ、カシャッとディックから腹、胸へとよじ上る音が顔を愛撫する。 《「もっと見せて」と彼が笑い、だらしなく精液を垂らすディックを握り込む。》
「無理強いをしてすいませんが…」
申し訳なさげにそう言ったテイラーは、床に1m四方くらいのアクリル板を置き、その真ん中に吸盤で固定するディルドを設置した。
用意周到過ぎる。そんな疑念は、《背後の男に「貴方のためななら当然」と笑い飛ばされる。》
「も、じゅうぶん、だろっ…」
黒く禍々しい玩具から目を背けても、《「足りないでしょう」と囁く声に》萎えたディックが熱くなる。
「僕はあまり上手くできていないと思うので、自分で気持ちよくなってください」
ニコニコと僕の拘束を解いたテイラーが、早速床にへばりついてファインダーを覗き込んだ。
促されるままにアクリル板を跨(また)いだ僕は、より強い快楽を欲しがる体に抗えない。
「ア、ぅ、ん…っ」
ゆっくりと玩具に沈めるケツの奥で、肉がより深く拓かれていく甘い圧迫に声が漏れる。
《「いいこですね」耳を舐った彼が笑い、痛いほど乳首を捻(ねじ)る。》
「…貴方の乳首、気持ちよさそうですね…」
股と顔を往復するシャッターが、みっともない僕をつぶさに犯していく。
《背後の彼が僕の腰を強く押し込んで》、僕は盛った犬みたいに玩具に腰を打ち下ろしている。
「ん、おお、あ゛ッ、い、イイっーーー」
「貴方は本当に…言葉になりません…」
より深く貫いた肉は熱く痺れて、大きく腰を上げてこそぐ肉が蕩け落ちる。
《「一人戯びが上手ですね」とディルドにディックを重ねた彼が、下から僕を突き上げる。》
「ん゛あ…ッ!」
「真奥と、手前と…ディルドを抜く時がイイんですね…」
体を舐め回していたシャッターが少しずつ僕を探り、快感に同調して、ついにはカシャッと聞こえるたびに、体の芯に閃光のようなエクスタシーが走った。
「あ゛ぁ゛、もっ、おッーーー」
「とても、綺麗だ…」
無心で腰を振る僕ににじり寄る彼の股間も、大きく張り出している。
《「貴方の中が悦んでる」僕の腰を掴んだ彼が、いやらしく腰を回す。》
「いく、い、い゛ッ…ぐッ、ア、あ゛ーーー」
腰の深いところから押し寄せる快感が溢(あふ)れこぼれた瞬間、真っ白い闇に放り出された。
「…あ、あ゛…っーーーーーー」
ふわふわとした恍惚の中で、ケツからずるんと玩具が抜ける快感がまた弾けた。
目を開けると、床に倒れた僕の上で、テイラーが一心にシャッターを切っている。
「立って、ソファに手をついてお尻を出してください…」
淡々とした指示に滲む昂奮が、僕の弾切れのディックに熱を灯す。
もうイヤだとどれだけ頭で思っても、体は言うことを聞かない。言われるまま、ソファにしがみついてケツを突き出す僕の《後ろで、「終わりなんてない」と笑う彼が、腰から背筋を舐めあげる。》
「…本当は、こういうオモチャが嫌いです」
つまらなそうに言ったテイラーの手が、尻の肉を開く感触にため息が漏れる。
また、躊躇なくケツに捻じ込まれたディックはさっきのよりは短いが、無数の柔らかな棘が肉を掻いた。
「ゔっ…ひ、あっ…」
「下品なだけで美しくない…でも、貴方はこんなモノでも悦んでくれる…」
捻(ねじ)りながら抜かれる快感にたまらず呻いていた僕は、射精よりも遥かに強い快楽に取り憑かれている。
「ン、おおッーーー」
「生まれたての子鹿みたいです…こんな貴方を知ったら、みんなどう思うでしょう…?」
「ん、う゛ッ…」
快感をこらえるのに精一杯で、言葉の意味に追いつけない。《もう一人の彼が、内腿に流れ落ちる汗を啜っている。》
「オモチャを…引くと…めくれたアヌスが…吸い込みますね…」
玩具の往復(ピストン)に重なるシャッターが、腰の奥までカシャッと届く。いやでもディックに血が巡り、《喜んだ彼が長い指で僕のタマを転がしている。》
「も、もぉ、やめーーー」
「景色が殺風景ですね、気分を変えましょうか…」
僕の声なんか聞こえていないように、また何かを取り出したテイラーは、ガーターベルトのようなものを僕の腰に括り付けた。
「なっーーー」
「これは革製で、デザインもまだマシです」
股間の前から尻の窪みに通したY字のベルト(腰の左右から足の付け根へV字に通し、会陰で1本になる)がきつく留められて、それがケツに埋めた玩具を固定したのだとわかった。
「こん、なっ…」
振り返ると、体内の玩具が食い込む衝撃で力が抜けた。
「あッーーー」
ふらつく足でなんとかソファにもたれても、息をするだけでめり込む玩具に弄(もてあそ)ばれる。《耳元で笑う彼が、ガチガチに猛るディックをわざと避(よ)けて、陰毛を指で梳く。》
「あぁ…とても、扇情的ですね…」
カシャッ、カシャッと体中に注がれる快楽が、ケツを犯す下品な快感を増幅する。
「貴方は本当に、セクシーです…」
普段、誰彼から聞く称賛(セクシー)とは熱量の違う、劣情を帯びたその言葉を聞くだけで、ゾクゾクとしたものが背筋を這い上がる。
「あ、ア…」
ついに腰が抜けて膝をつくと、すかさずテイラーが「四つん這いになってください」と笑った。
「バスルームに行きましょう」
促された通りに四つん這いになると、テイラーが僕の尻を覗いて何かしようとした。
振り返ろうとしたその時、ケツの中でブンと唸った刺激にタマを蹴り上げられた僕は、声も出せずに絶頂して床に崩れた。
* *
それからのことは、朦朧としていてあまりよく覚えていない。
ケツに仕込まれていた玩具は、ぐねぐねくねるバイブ付きのシロモノだった。少し動くだけで容赦なくケツを抉り回すそれに構わず、テイラーは僕をバスルームに向かわせた。
一歩、二歩と這うたびに無理にでもイかされて、床に転がってはなんとか這いずって、30歩もかからない距離を10分もかけてバスルームに辿り着くまで、彼は前や後ろや横から写真を撮りまくっていた。
わざわざシチュエーションを変えても、テイラーはシャワーを僕にかけるとか、バスタブに僕を沈めるとか、そういうことをする気はないらしかった。
冷えた石壁を背になんとか立っている僕は、《前から僕にへばりついて腰を振っている男》と、《穴という穴にねじ込まれる》シャッターと、下品にケツを擦(こす)り上げる玩具に犯され続けている。
体が耐えられる快楽の限界はとっくに振り切れて、カメラ越しの男の呻くような賛美も、《もう一人の彼の絡みつく囁きも》、聞こえていても意味をなす前に溶けてしまう。
足元に跪(ひざまず)いたテイラーが腰の拘束具(ベルト)を外して、何度かシャッターを切ると「しゃがんでください」と笑った。
理解する前に手を引かれて壁を背に腰を落とすと、《彼が「見えない」と僕の膝を開く》。僕から離れた手はとても熱く、喘ぐ肩は震えていた。すぐにカメラを構えたその表情(かお)はやっぱりよく見えないが、もう、カメラを払いのける気力はなかった。
「手を使わずに、オモチャを出してください」
「…も、お、むりーーー」
「お願いします」
有無を言わさない声に、今更に腹が立った。
これが済んだら、めいっぱい殴ってやる。
そう心に決めて、なんとか腹に力を込めると、痛いほどの快感で目が眩んだ。
「ん゛、ぅお…ッ…!!」
「出てきましたよ、上手ですね…」
シャッターが《ケツで蠢いて》、《彼がディックを根本から扱(しご)く》。
「あッ、あ゛、だめ、むりーーー」
「ペニスも悦んでいますね…」
「もッ、でない、あ゛、でない、でるーーー」
ケツから玩具が抜けるにつれて、卑猥に蠢く下品な音がディックまで震わせる。
「貴方のペニス、とても素直で好きです…」
「ア、も゛、ゆ、ゆるしてッ…」
「…今のままもいいですが、毛を剃って、綺麗な体をネガに残しておきたいですね…」
「も、ゆるし、だめ、ア゛、で、でるッーーー」
「はい、出してください」
「…アッ、あ゛、あああーーー」
目を閉じて、凶悪な玩具をひり出した瞬間、僕は、ケモノのように吠えて失禁していた。
「ア、あ゛…ッ」「あっ…」
サオを伝ってタマから尻に垂れる小便は熱く、甘美な解放に震え上がる。
「…ッーーー」
地獄のような快感に焼かれて、天国に放り出された体が堕ちていく。
「ぁ、あ゛ッ…」
へたり込んだ尻の下でガタガタ煩(うるさ)い玩具を取り除く手の感触に、だらしない声が漏れた。
「あ…ふーーー」
「嗚呼…シールズさん…」
目を開くと、ぼやけた視界のすぐそこにレンズがあった。
「…っ……っ…」
何度かシャッターを切った後、静かにカメラを下ろした男は、心の底から幸せそうに笑っていた。
「…とても、とても、綺麗です」
僕の涙を指先で拭ったテイラーは、僕の腰に屈(かが)み込んで小便塗(まみ)れのディックを咥えた。
自分の股間を弄(いじ)り始めた彼のそこは、見えない。
霞んでいく意識のどこかで、《誰かが「この先ずっと、貴方を撮り続けてあげましょう」と囁いた》。
丁寧にしゃぶられる甘い悦びに浸されて、「うせろ」と口にする前に意識がホワイトアウトした。
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