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* *
僕の口を貪ったテイラーが、ガウンを乱暴に剥いでいく。男の唾液は、あのタバコとビールの味がした。暴力的な舌に息を奪われても抵抗がままならないのは、この男こそがドラッグだからだと酔った頭で理解する。
流れるようにねじ伏せられて、ガウンのベルトで後ろ手に縛られていた僕は、あっけなくテイラーの手の内に堕ちている。
「なんだよ、これーーー」
「気が変わって殴られてもイヤですから…」
僕を抱き直した男が、吐息が混じるところで笑う。
「お陰で殴る気になった」
「そうですか」と息を荒げた唇が、首筋を吸う。
「…ッ」
肩をなぞる手は冷たく、確かめるように胸へ這う指先は軽い。
「…貴方は、期待しています」
乱暴に僕を封じた後で、左の胸を弄(まさぐ)る手は柔らかく、乳の脂肪を押し揉む指は腫れ物に触れるように肌を滑る。
「あ…」
まるで、ダイヤの汚れを拭うように。そっと摘み上げられるそこに、びりびりと甘い戦慄が走った。
「…あ」
「どんどん、固くなる…」
目と鼻の先で、僕を伺う吐息が熱い。
「だまれよーーー」
「どれだけこうしたかったか、わかりますか…?」
耳の深くに囁いて、肩から鎖骨、そして右の胸へと辿る唇が優しく肌を吸う。
「しる、か…」
焦れた胸の先をざらりと擦(こす)る舌は熱く、ぬるりとした熱が腰の底に沁みていく。
「あッ…」
「乳首で、いってほしいんです…」
昂奮に揺らぐ吐息が、数時間前に消えたはずの火をあっさり焚きつける。
「なん、で…ッーーー」
「理由が、必要ですか…?」
熱を帯びていく腰に、テイラーの腰が強く押しつけられる。
とうに勃ったディックは張り出した男のそれに潰されて、甘く苦しく奮い立つ。
「…とても、素敵だから」
「あ、ア、ああッ…」
乳首をねっとり吸引されて、今日知ったばかりの快感に膝が抜ける。
「とても…」
倒れ込む僕をベッドに横たえた彼は、まるで何かの儀式みたいに、ゆっくりと服を脱いだ。
「貴方を抱いてきた男に嫉妬します」
うつ伏せの僕のうなじを噛みながら、囁く彼のディックが尻たぶにめり込んでいる。
「だまれ、よ…」
「……僕が、初めてですか?」
背中に吸いついた唇が笑い、背骨のひとつひとつをくすぐり下りていく。
「…ほどけってーーー」
「本当は、こんなこと不本意です」
括(くく)った手に頬擦りをして、右の小指から左の小指まで、1本1本丁寧にしゃぶる吐息が震えている。
「…膝をついて、お尻を見せてください」
「むり」と吐き捨てても、腰を上げて尻を突き出している僕は、腰の奥で疼く熱を慰めたくてたまらない。
「…お尻の穴、やっぱり、綺麗です」
「…ッ!」
尻の左右を鷲掴んだ手が、円を描くように肉を揉みしだく。大きくゆるやかに、溝を広げていく力は強い。
すれすれを掠(かす)める指にケツの穴を開かれるたびに、腑抜けた声が漏れてしまう。
「も、おっーーー」
「ここ、僕が剃ってあげますね…」
タマから会陰を舐め上げた男が、開いたケツの穴を大きく嗅いだ。
「ア、おまっーーー」
「はい」
べろべろ舐め上げられて、ふんふん嗅がれるたびに腰が揺れて、腹を打つディックがばちばち音を立てる。
「あ、あ、あ…」
「さっき洗ってしまったので、あまり匂わないですね、残念…」
「ん、ア、あ…」
「さっき剃らなかったのは、貴方が寝ちゃってたからです、勝手にしたら失礼ですから…」
「ン、うっーーー」
「お尻の穴、ぱくぱくしてますよ」
ちろちろとケツの穴をほじる舌の感触だけで、腰を上げていられなくなる。
「るせ、ア、そこーーー」
「ほら、もっと突き出してください…欲しいでしょう?」
唐突な鈍い痛みの後で、半ば無理やり体内に埋め込まれたモノの感触に息が詰まる。
「ッう…!?」
「そんなに締めないでください…」
ケツの中で蠢く2本の指が、無邪気に僕を掻き回す。一方で、ディックを握って鈴口をこじ開ける指が、垂れる先走りを割れ目から亀頭へと塗りたくる。
子供みたいに無邪気な指に弄(もてあそ)ばれたら、ふしだらに腰を振ることしかできない。
「アう、あ゛ッ、だっ、んぅ…」
「お尻…もう解(ほぐ)れてるみたいですね」
「あ、うッ、アッーーー」
「…おちんぽとメスイキ、どっちが好きですか?」
指の先や節に抉られる肉がどうしようもなく熱くなれば、ディックも痛いほど熱(いき)り立つ。
「あ、あッ、そ、あッーーー」
「メスイキですね、知ってます…」
「だ、アッ、い、くーーー」
「ひとりでいくのはずるいですよ」
指が抜かれたケツの穴が、男のカタチに飢えていた。
「我慢できません、挿れます」
「えーーー」
心の準備もクソもなくテイラーに満たされた僕は、待ち侘びた快感に耽(ふけ)る間もなく絶頂した。
テイラーのディックは熱く、硬かった。
僕の汗を啜りながら、首や肩や背に愛撫を込める体も熱く、気が触れるほど優しかった。
熱心に探り当てられた弱点を執拗に攻められて、本当の快感をわからせられるたびに、僕は、声が枯れるほど泣いてよがった。
「シールズさん…っ」
何度も僕を呼びながら、噛んだ肌に囁きながら、テイラーは僕を崩していった。
「シールズさん、ここですか…」
シーツに潰れた僕を抱きながら、彼は狂ったように前立腺を擦(こす)り上げる。
「シールズさん、そんなに、悦んでもらえて、嬉しいです…」
ディックを搾るように扱(しご)かれる僕は、腰と彼の境目がわからなくなるほど、どろどろに溶けていく。
「……シールズさん、僕を見てください」
ーーーいつの間にか、解(と)かれていた両腕で、僕を突き上げる男にしがみついていた。
「…とても、綺麗です」
僕の涙を舐め取って、頬を撫でる彼は、幸せそうに笑っている。
「なぐ、るっ…」
「その前に、もう、射(い)きますね…」
僕の名を呼ぶ唇に食いつくと、絡めた舌の根からアタマが蕩け落ちていった。
体の中で脈打つ男の衝動をもっと深くに迎え入れた時、僕とテイラーは、ひとつの同じ絶頂(エクスタシー)に昇りつめた。
* *
テイラーと重なり合ったまま、5分か10分か、永遠みたいな恍惚を漂っていた。
ケツから彼が抜けて目を開けた現実は、まだふわふわとして重力がない。
僕を覗くテイラーの目が潤んでいるような気がしたが、間接照明のいたずらかもしれない。
僕の胸に頬を擦(なす)るため息は、震えていた。それから、胸から下腹に口づけを落とした彼は、頬擦りをしたディックを犬みたいに舐めた。
「…もーいい」
痺れ切った体で右に転がると、窓から変わらず見事な夜景が見えた。こんな贅沢な壁紙を無駄にするほどファックにのめり込んでたなんて、アホみたいだ。
ベッドを降りたテイラーを見ると、白い背に僕の仕業らしい爪の痕が赤々と刻まれていた。両手が解(ほど)かれた後、対面座位や騎乗位なんかもした覚えがあるが、いつ引っ掻いてやったのか思い出せない。いつどころか、ブッ飛ぶたびにしていた気もする。
ベッドに戻ったテイラーは、温かな濡れタオルで僕の股間を拭い始めた。
「…とっても、綺麗です」
「…おまえ、ごい(語彙)がすくないな」
「だから、写真を撮るんです」
フルチンで僕の陰部を丁寧に拭きながら、彼は真剣な顔で言った。
「…さっきは、とってなかったーーー」
「ハメ撮りするような趣味はありません」
怪訝な顔をしたテイラーは、僕を拭き終えると自分の股間を拭った。
彼の萎(しぼ)んでるディックは初めて見たが、特に感慨はなかった。
「……おまえも、おまえのびがく(美学)もよくわかんない」
「はい」
ベッドに戻ったテイラーに、水のボトルをもらった。
差し出されたタバコを咥えると、彼はそれに火をつけた。
至れり尽くせりだなと眺めた彼は、僕に肩を並べて美味(うま)そうにタバコをふかした。
「……おまえのたばこ、すきじゃない」
「…わがままですね」
「…ぼくをだれだとおもってんの?」
「俳優のシールズさんです」
「……」
「…」
「…おまえさ、なんであのときぼくをするーしたの?」
「…あの時?」
「はじめてあったとき、すたじおのきつえんじょ」
「あぁ…忙しそうだったので…」
「…おまえのこと、しらべてた」
「そうだったんですか」
「…ぜんぜんしらなかったし」
「邪魔をしなくてよかったです」
「…きもいくせにまとも」
「きもいですか?」
「……いつもおちんぽっていってんの?」
「一度、言ってみたくて…」
「メスイキも?」
「はい」
「…きも」
「僕を殴りますか?」
「……きず、つけたからもういい」
「…傷?」
差し出された灰皿にタバコを放って、テイラーに背を向けた。
「ねる」
「…はい」
しばらくして、タバコを吸い終えた彼が独り言みたいに呟いた。
「…隣で、寝ていいですか?」
「…おまえのベッドだろ」
「はい」
「………」
「おやすみなさい、シールズさん」
枕元の明かりが落とされると、窓の夜景がやかましかった。
「…シールズさんとか、きも」
目をつぶって布団を被ると、横に潜り込んだテイラーは何も言わなかった。
* *
たぶん、明け方。ふと目が覚めると、目の前に少しだけ知った気がする顔があった。
彼(そ)の寝顔は、腹が立つくらいキレイに見えた。
もう一度くらいキスをしてもいいと思った自分に、何言ってんだよと呆れた。実際、この男を“心地よく感じている”のは事実なのに、それを真正面から認めていいのかわからない。
まどろみの中でそんなことをぐるぐると考えているうちに、もう一度眠りに落ちた。
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