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* おまけ *
カシャッという音で目が覚めた。
スマホを見ると、まだ9時。
昨夜はベッドに入ったのが遅かったとはいえ夜明けくらいまで励(はげ)んでたし、今日はオフだから、昼過ぎまでは寝てやるつもりだった。
「…るせぇ」
うつ伏せで枕に突っ伏すと、ヤツはカーテンを開ける代わりにベッドに掛けた。そして、何かをガサガサすると、僕の右手を引っ張って彼の腿の上に乗せた。
狸寝入りをきめようと思っていた矢先、指に違和感を感じて顔を上げた。
「…??」
テイラーが、親指の爪に黒っぽいマニキュアを塗っていた。
「ぁにしてんの??」
「マニキュアです」
「見ればわかる、なんで?」
「似合うと思うので」
真剣に覗き込む男は、人差し指を塗り始めた。
「似合う??」
「えぇ、FAMEのジェンダーレスな貴方、とてもよかったので…」
「…」
「本当のところ、楽しんでましたよね?」
「うるさい、僕はおもちゃじゃないーーー」
「そうですよ」
「…黒じゃメタラーみたくなるだろ」
「パール入りのネイビーです」
「……今買ってきた?」
「はい」
「…明日には落とすーーー」
「別につけっぱでもいいじゃないですか」
ベッドの逆サイドに掛け直した彼に、左手を持ってかれた。
右手を見ると、ネイルがところどころはみ出している。
「おい、はみ出てんじゃん」
「乾くまで触らないでください、風呂で洗ってれば取れますよ」
「…」
「後で風呂に入りましょうーーー」
「寝る」
しばらくして、左手を終えたテイラーが足元に移動した。
「仰向けになってください」
「なんで」
「足も塗ります」
「やだよ」
「…カーテン開けますよ?」
「…ほんとうるせえ」
仰向けに転がってやると、テイラーがシャッターを切った。
「…忙しいヤツだな…」
「はい」と笑った彼は、僕の右足を持ち上げて爪先にキスをした。
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