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第五章 恋の鼓動と開く心26

*** 「誰だっけ? 集合場所に5分前行動って言ったのは?」  同じ班のヤツから、ほかにもグチグチ言われ続けてしまった。それはしょうがないだろう、なんてったって班長のクセに、3分前に集合場所に到着したのだから。 「悪かったって。プリクラの印刷が、思った以上に時間がかかったんだ」 「今時、こんなところでプリクラを撮るんだ?」  体に突き刺さる班員からの視線の痛いこと、この上ない。 「だって、悠真との記念が欲しかったし……画質がいい分だけ、印刷に時間がかかっちまったんだよ」 「西野は班長なのに、時間配分もできないのか!」  ぎゃんぎゃん叱られる俺の前に、悠真が割って入った。 「みんな、本当にごめんなさい。俺が珍しいねって言って、最初にプリクラを見つけたのがキッカケだったんだ。陽太ひとりが悪いんじゃない。俺にも責任があります。遅れて本当にごめんなさい」  腰から頭を下げる悠真の姿に、ほかの班員も怒りが鎮まったのか揃って沈黙した。 「B組~、クラスメイトが全員集合しているなら、バスに乗ってくれ!」 「わかりました。1班集合してるけど、ほかの班も大丈夫だよな?」  俺が声をかけたら、佐伯や斎藤が親指を立てて班員が揃っていることを示した。オメガで集まっている班も大丈夫だと、腕で丸を作ってアピールしてくれる。 「遅れて本当に悪かった。今後同じことがないように気をつける! それじゃあバスに乗ってくれ」  悠真の隣で頭を下げて、先に班員をバスに乗るように誘導した。同じ班のヤツが乗り込むまで、ずっと頭を下げ続ける。 「陽太ごめんね……」  済まなそうに謝る悠真の手を、唐突に握りしめる。みんなが乗り込んだのを見て、掴んだ手を引っ張り、車内に入った。そして、空いてる座席に一緒に並んで座る。 「悠真は謝る必要ないのに。俺がプリクラ撮りたいって言ったんだからさ」 「それに同意した時点で、俺も同罪だよ」  見るからに、しょんぼりした顔の悠真。俺がほかのヤツに叱られている姿を目の当たりにして、心を痛めているに違いない。 「体育祭のツーショット写真は、体操服だったろ。今日は制服でツーショットが撮れたから、地味に嬉しいんだ」  湿っぽい雰囲気を打破しようと、明るい口調で悠真に話しかけた。 「陽太は本当にポジティブだよね。そういうところに、いつも救われてる」 「やりぃ! 悠真に褒められた」  俺がはしゃいで繋いでいた悠真の手を持ち上げた途端に反発して、それを下に引いて無理やり手を外す。 「褒めたけど、呆れてるのもあるからね。あと、ムダに手を繋ぎすぎ」 「手を繋ぐのがイヤなら、腕を組んでみる?」  小首を傾げて、かわいらしく問いかけた俺に、うんと嫌そうな顔をした悠真。 「いろいろチャレンジしたい、陽太の気持ちはわからなくはないけど、次から次に試してみるのは、どうかと思うよ」 「これがタクミだったら、喜んでやるくせに」  ボソッと呟いたら、悠真はすごく驚いた表情を見せた。 「……陽太、どうしてわかるの?」  ショックなのを示すために、わざとらしく驚いてやる。 「ゲッ! やっぱりそうなんだ……」 「だってタクミは憧れの人だし。一緒に行動してみたいと思うのは、当然じゃないかな」  流暢に説明されても、俺は困るしかないわけで――。 「タクミは二次元、俺は三次元な! 実際俺にも憧れてるって、悠真は言ってたじゃん」 「タクミはタクミ、陽太は陽太だよ」  うまい具合にかわされてしまい、どうしていいかわからなくなってしまったのだった。

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