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第五章 恋の鼓動と開く心30
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悠真と別々の部屋で寝た翌朝、朝食のランチバイキング会場で、運よく鉢合わせした。
「陽太おはよう! よく眠れた?」
「おはよ。結構、疲れてたみたいでさ。同室のメンツの中で、一番最初に寝ちまった。周りの騒がしさなんて、気にならないくらいにぐっすりだった……」
「そうなんだ。俺たちは静かに、枕投げを楽しんだよ」
悠真は俺のすぐ隣で柔らかい笑みを浮かべながら、カップの中にコーンスープを注ぐ。
「ハハッ、さすがは、体育会系ばかりが集まってる班だからな。それ、本当に静かにできたのかよ?」
俺はコーンスープ鍋の隣にある中華スープを、カップに注いだ。
「だって、無言でやるのがルールだって誰かが言ってね。笑いをかみ殺しながら、みんなで枕を投げて楽しんだんだよ。陽太はバターロール食べる?」
悠真はトングを手にして、トースターにバターロールをふたつ投入する。
「俺はクロワッサンが食べたい。ふたつ隣に並べてくれると助かる」
「わかった。1分ほどお待ちくださいだって」
「その間にサラダを取り分けるけど、嫌いなものはあるか?」
悠真の後ろを通り過ぎ、サラダコーナーの前に立ちながら訊ねた。
「基本、好き嫌いはないよ。陽太のセンスにまかせるね」
「まかせろ! 栄養満点のサラダを作ってやる」
俺がセレクトしたサラダを悠真が食べると思ったら、俄然やる気が出てしまった。気づいたら皿の上には、大量の葉野菜やトマトが――。
(まるで、悠真を想う俺の気持ちじゃん……)
一度皿に入れたものは返却不可なので、悠真用の皿の中を綺麗にセッティングし直し、俺が食べる用の皿の上がすごいことになったのは、言うまでもない!
「陽太、パンが温まったよ……って、ちょっとお皿の上が大変なことになってるけど、本当に食べ切れるの?」
トースターからパンを取り出し、俺のクロワッサンも持って来てくれた悠真が目を丸くした。
「おうよ! 朝からしっかり食べて、札幌散策に備えるんだ!」
「張り切るのはいいけど、食べすぎてお腹が痛くなっても知らないよ」
呆れ顔した悠真のトレーに、綺麗に盛りつけたサラダを載せてあげた。
「ご忠告感謝! 悠真はそれくらいで大丈夫だろ?」
「うん。量もちょうどいいし、俺の好きなスイートコーンが入ってるのがいいね」
「ドレッシング、いろんな種類があったから、あえてかけてないぞ」
(悠真と相思相愛で付き合うことになって、同棲したらキッチンでのやり取りはこんな感じになるのかな――)
まるでそれの予行練習をしてるみたいだと思ったら、顔が自然とニヤけてしまう。
「陽太、さっさとドレッシングをかけて退けてあげないと、後ろが詰まっちゃうよ」
「うわっと! 悪い悪い、ついボーっとしちまって」
ぽわ~んとしている最中にいきなり声をかけられ、危うくトレーをひっくり返しそうになった。
「寝ぼけた陽太は、本当に危なっかしいね。ほら、ちゃんとしなきゃ!」
なんて悠真にお世話になりまくりながら席に着き、朝食を食べることになった俺。もちろんすべて完食し、1班の部屋に戻って班のヤツらと合流。計画していた札幌散策にレッツゴーしたのだった。
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