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第2話

 伽の相手に選ばれるオメガには条件がある。  第一に、城へやってきたら体の隅々まで調査を受けること。  第二に、用意されたもの以外を身に付けないこと。  第三に、アルファに求められたことは受け入れること。  この条件を守り、最後まで相手を務められた場合、たんまりと報酬金がでることになっている。  さて、今夜用意されたオメガは陽春によると平民らしかった。それもどちらかというと貧しい家庭で暮らしているらしい。  リオールはそれ程身分を気にするタイプでは無いのだが、遂に貴族のオメガには出会い尽くしたかと少し肩を落としていた。  リオールは寝殿に行き、そこでオメガの到着を待つ。  眠たくなってきたなとぼんやりしていたのだが、ふいに空気が変わった。  仄かに、濃密な甘い香りが広がり始める。 「失礼いたします」 「っ!」  香りは強くなり、リオールは咄嗟に鼻と口を手でおおった。  天蓋が開かれ、目隠しをされたオメガが入ってくる。  真っ白な肌に、銀色の胸まで伸びる長い髪をした男。  その姿を目に入れた途端、口の奥が熱く疼く。 「お待たせいたしました」  透き通るような柔らかい声に心臓が一度だけ大きく跳ねた。 「本日はどうぞ、よろしくお願いいたします」  恭しく頭を下げたオメガに、リオールは「ああ」と反射的に応じながら、己の身体の変化に眉をひそめる。  額がじっとりと汗ばみ、熱が腰の奥に滲み出していた。  ──この反応は、初めてだ。  香りの発信源を確かめるように、オメガの首元へ顔を寄せる。  鼻先が触れそうな距離で、息を吸い込んだ。   「!」 「……お前、何かをつけてきたのか」 「つける……? いいえ、私は何も……」 「……」  オメガが現れた途端に広がる甘い香り。本人から発せられるそれは何かをつけているからだと思ったが、違うらしい。  確かにこの伽に選ばれるには条件をクリアしなければならないので、それはそうかと納得したのだが、どうしてか、その香りのせいでリオールの呼吸は速くなっていった。 「あの、リオール様」 「っ!」  名前を呼ばれた途端、身体中の血が沸騰するような熱さを覚え、慌てて彼から離れる。  ──なんだ、これは。  生まれて初めて感じる乾き。  無性に目の前のオメガに噛みつきたくなって、同意も無しにそんなことをしてはいけないと、今までにない衝動と混乱の中、慌てて声を上げた。

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