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第24話
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侮辱にも似た言葉をいくつも浴びせられる毎日。
何度も怒鳴られ、誰かがこぼす小さな咳払いにさえも肩を震わせている日々。
伸びしろがあると自身に言い聞かせていたアスカだが、早くも心が折れそうになっていた。
唯一頼れるはずのリオールも執務が忙しいようで会うことも叶わない。
この沈んだ気持ちを皇太子とはいえ年下である彼に打ち明けるつもりはないが、とはいえ自分の住まいには大抵愛想笑いひとつしない清夏と、時折顔を見せる薄氷しか居ない。
誰にも言えない暗くて重たいものが心にまるで雪のように積もっていく。
「──いい加減になさい! 何度も繰り返しているでしょう!」
大声で怒鳴るヴェルデに、アスカは冷や汗をかいた。
何度も繰り返している。それは分かっているのだが、これまで礼儀作法の勉強などをしたことがなかったアスカからすると、難しいことが多い。
「っ、も、申し訳ございませんっ」
口癖のようになった謝罪は、やはり何よりも上手くなった気がする。
ヴェルデは怒鳴り声に反応して震えだした手を袖の中に隠した。
「これ程までに出来の悪い生徒は初めてです……やはり、平民だからかしら」
しかし、ヴェルデのその発言はアスカの心を傷付けるのには十分だった。
視界がじんわりと滲む。
泣くな、泣いては負けたことになる。そう思い俯いて唇を噛んだ。
「──何をしている」
その場の空気が、一瞬で変わった。
室内に響いたのは、聞き覚えのある声のはず。だがしかし、それはいつもよりも低く、重みがあった。
肌が粟立つ。
そこに立っているのはリオールのはずなのに、まるで違う人物かのように見える。
恐怖で体が固まり、動けない。
呼吸の仕方も忘れたかのように上手く息が吸えずにいると、リオールの側仕えの陽春と目が合った。
彼はアスカを安心させるように小さく頷き、そこで漸く息が吸えた。
リオールがヴェルデと話をしているが、頭に入ってこない。
いつから、見て、聞いていたのだろう。
情けない姿を見られてしまった。
こんな自分では、呆れられてしまう。
この孤独な場所で、唯一の味方を失いそうだ。
様々な恐怖に、無意識のうちに拳を握りしめる。
「アスカ」
名前を呼ばれ、体が小さく跳ねた。
何を言われるだろうか。
緊張と不安で手の震えが止まらない。
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