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第26話
「……私のような者が、王宮内を歩いていたら、皆嫌な気分になると思いませんか」
「……私はそのようには思いません」
「そう、でしょうか……」
ヴェルデだけではなく、色々なところで平民という事を馬鹿にしている声があるのを知っている。
ヴェルデに叱られるアスカをクスクスと笑う声もこれまで何度か聞こえていた。
全くと言っていいほど、自信が無いのだ。
なぜなら彼らの言うことを理解できてしまうからである。
皇太子殿下に釣り合うような人間ではないということを。
「アスカ様」
「っ、……はい」
薄氷は諭すようにゆっくりと言葉を紡いでいく。
「もしも、アスカ様の御前で貴方様を笑う者が居たのなら、私が責任を持って、その者を排除しましょう」
「……え?」
「ですから、ご安心ください。──それでももし、アスカ様が不安だと仰るのであれば──皇太子殿下をお誘いするのは如何でしょう」
アスカは思わず目を見張り、表情を変えることなく、けれど大胆なことを言う薄氷を見つめた。
「それも、陽が沈んでからであれば、それほど周りの目も気にならないでしょう」
「……それは、殿下を盾のように使うということにはなりませんか……?」
「その通りでございます」
「! そ、それは、よろしくないのでしょう」
薄氷から大胆な発言が止まらない。
リオールを盾にするなど……けれど、そんな言葉が少しだけ救いに思えてしまった
しかし、アスカはやはり誰にも聞かれていないか気が気では無く、この話をやめようとしたのだが。
「何を仰いますか。貴方様は殿下の后となるお方でしょう。確かにそのようなお方は、時に殿下の盾になり剣にならなければいけません。ですが、お心が弱っている時は殿下に盾になってもらわなくては」
「っ……」
アスカは薄氷の言葉に何も言えなくなる。
『もっと殿下に頼っていい』と言われているような気がした。
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