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第46話

■■■  アスカが発情期に入ったとの報せは、すぐにリオールの耳に入った。  リオールは執務を放り出し、今すぐにでもアスカの元へ駆け出そうとしたのだが、「お待ちくださいっ!」と陽春に止められる。 「なんだ、なぜ止める!」 「いけません、殿下。何の御薬もお飲みになられておりません。このままアスカ様の元へ向かわれては、きっとお心の制御はつきませんっ!」  陽春が必死にリオールを止める。  リオールは、彼の言うことも一理あると理解した。  そもそも、初めて出会った時にアスカの僅かなフェロモンを嗅いで『噛みたい』と思ったくらいなのだ。  いま本格的な発情期を迎え、フェロモンを醸し出しているアスカに、無防備に近付くのは危ない。 「……抑制剤を持ってまいれ」 「はい、ただいま」  胸の中を焦燥感が満たすが、リオールは何度か息を吐いて、ひとまず『皇太子』としての姿を守ることにした。 「薬が効けば、アスカの元へ行く」 「報告によれば、症状がかなり重たいと聞いております。どうかアスカ様を傷つけるようなことだけはなさいますな」 「……、わかっている」  わかってはいるが、どうなるかは誰にも予想ができない。  薬が効くまでの数刻。  この数刻で、アスカがどれほど苦しむのかと思うと、すぐにでも彼の傍に向かいたい。  アスカは今、一人で──。  ギリギリと拳を握る。  薄皮がプツッと破れ、血が滲んだ。

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