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第48話
リオールは悲しみに昏れる胸中を隠すため、心を削ぎ落としたかのような表情で王宮の庭を歩いていた。
──これ程悲しいと思うのは、母上が王宮を去った時以来か。
番になりたいと思う相手に、拒絶されることが、こんなにも辛いこととは。
リオールは執務に戻る気にもなれず、王宮内の大きな池を眺める。
水分を多く含んだ空気が、気持ちをも憂鬱にさせていく。
「──殿下」
陽春がリオールの傍に駆け寄る。
声に反応して振り返ったリオールは、陽春を見て冷たく、醒めた笑みを零した。
「私は、皇太子であるのに、アスカにとってはただの子供に過ぎないのかもしれない」
「殿下……」
「こんなにも早く……大人になりたいと思ったことは、無いぞ」
こればかりはどうしようにも解決ができない問題だった。
しばらくその場に留まっていたリオールだが、陽春が再度声を掛けた。
「殿下、ひとまず、戻りましょう。ここに居ては暑さで殿下が倒れてしまいます」
「……」
陽春は額にじんわりと汗をかいていた。
自分一人であれば気にはしなかったが、他の者にまで迷惑を掛けるのは不本意だ。
「──わかった。アスカの従者に、くれぐれも報告を怠るなと伝えておけ」
「かしこまりました」
陽春が頭を下げる。
それを一瞥したリオールは、執務に戻るために踵を返した。
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