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第68話
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真剣な眼差しに貫かれる。
アスカはリオールからの視線を逸らせないでいた。
「……リオール様」
温度の高い視線は、長い時間をずっと待っていてくれたことがわかる。
これまで何度もあった発情期も、彼は抑制剤を飲んでジッと耐えながら、ただ、傍にいてくれた。
いくら抑制剤を飲んでいるからといって、きっとフェロモンは感じているのに、なんてことないような涼しい表情で手を握ってくれていたのだ。
けれど──こんなにも彼が『触れたい』と思ってくれていただなんて。
その想いが、胸の奥にじんわりと広がっていく。
嬉しくて、恥ずかしくて、どこかくすぐったくて──そして、なによりも愛おしい。
「……ずっと……そう思ってくださっていたのですか……?」
膝の上で組んだ指先が、わずかに震えているのがわかる。
「ああ、もちろん。アスカが思っている以上に、私がそなたを想う心は、大きいぞ」
「っ、」
「ずっと、ずっとだ。我慢していた。私が幼かったから。けれど、もう、大人になった」
苦笑する彼に、アスカはそっと目を伏せる。
「私のことを、気遣ってくださっていたのですね」
一度俯いたアスカは、恥ずかしさを感じながらも、ちゃんと言葉にして伝えなければと、続けて言葉を紡いだ。
「長くお待たせして、申し訳ありません。──触れてくださるのなら……優しくしてくださいね、リオール様」
リオールの目が見開かれたかと思えば、次の瞬間にはほんの微笑が浮かぶ。
安堵と喜びがないまぜになったような、凛々しい笑顔。
それが、あまりに美しくて──アスカの胸が、きゅっと締め付けられた。
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