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第88話
地下牢を出ると、空は赤く染っていた。
空を眺めて深く息を吸う。
そして、陽春に目を向けた。
「葉月の妹を保護しなければならん。しかし、連中に見つかってはいけない」
「はい。如何しますか」
「……亡くなったことにして、診療所から連れ出せば良い。王宮に連れ込むことは出来ん。どこか、安心できる場所へ」
「わかりました。ひとまず、保護することを最優先とします」
リオールは頷き、そしてフッと肩から力を抜いた。
「──陽春」
「はい」
「──臭うだろうか」
自身の服を嗅いだリオールは、眉を寄せている。
今までカビ臭い場所にいたせいで、少し気になるのだ。
というのも、このあとはアスカのもとへ向かう予定である。
「気になるようであれば、お着替えなされた方がよろしいかと」
「……しかし、早くアスカのもとへ行かねば」
「きっとお気になりませんよ」
「……そうであることを願おう」
パンパンと服を叩いて、少しでも匂いを飛ばす。
そして足早にアスカのもとへ向かった。
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