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第103話
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王位継承の儀を終えた夜。
先王──父と国王宮で酒を交わしながら、静かな会話を楽しむ。
「そなたが婚姻をし、アスカと番になるまでは王宮に残ろうか悩んでおる」
「それは、心強いですが……」
「……本心か? うるさい父には早く消えてほしいのであろう」
「まさか! そのようなことは決して思っておりません!」
「……は、どうだかな」
酔いのまわった父の横顔を見つめながら、リオールは盃を静かに傾けた。
燭台の明かりが、父子の影を、同じ方向に落とす。
しかしその静けさは、嵐の前の静寂だ。
「──明日だ」
「?」
「そなたは大臣たちの前に立ち、勅命を下すことになるだろう」
「──ええ。そのつもりです」
まずは、悪事の一掃。
アルドリノール卿を始め、静かに悪に手を染めていた者たちを断罪する。
「しかし、だ。そなたの命令ひとつで、亡くなる命があることを忘れるな」
「……はい」
「反対に、そなたの言葉で救われる者たちも多く在る。──取る手を、間違えるでないぞ」
「……しかと」
満足気に頷いた父は、あらためてリオールを見つめると、ハッと笑う。
それは愛を感じられるものだった。
「──大きくなったな」
「っ、」
父の一言に、目の奥がツンとする。
「厳しい事ばかりを言ってきた。それでも、このように真っ直ぐ育ってくれた。嬉しく思う」
「っ、父上」
「エルデにも、いつか、成長したそなたを見せたいものだ」
父はゆったりと言葉を紡ぐ。
リオールはついに、一粒の涙をほろりと零したのだった。
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