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第112話
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夜が更けた頃、アスカは静かに国王宮の扉を叩いた。
中から現れた陽春が、穏やかに微笑む。
「陛下はお待ちです。どうぞ、お入りください」
案内された奥の間では、リオールが既に身支度を整えていた。
凛とした佇まいのまま、けれど扉が開かれるや否や、彼の顔がふっと緩んだ。
「……来てくれたのだな、アスカ」
その一言に、胸がきゅうっと締めつけられる。
「はい……でも、やっぱり……少し、不安で……」
小さな声で吐き出した気持ちに、リオールは一歩近づいて、そっとアスカの頬を包んだ。
「無理はさせぬ。……そなたが望まぬことは、何も」
「……望んではいるのです。陛下に、触れてほしいと。……ですが、怖いのも、本当で」
瞳に浮かぶ揺れを、リオールは真剣な眼差しで受け止めた。
「ならば、ゆっくり進もう。痛みの代わりに、悦びだけを教えよう。私に身体を預けてくれ」
そう囁いて、リオールはアスカの手を取り、寝台に移動する。
彼の大きな手がアスカの肩にかかった。
薄布の衣が静かに滑り落ちるたび、アスカの白い肌が、静かな光に透けるように夜の灯りに浮かび上がる。
露になった肩、背中、鎖骨……。
その一つ一つに、リオールの口づけが降りていく。
「……ん……っ」
柔らかな唇が肌を撫でるたび、アスカの体が小さく震える。
けれど、その震えは恐れではなく、次第に熱へと変わっていった。
リオールの手が、背中をゆっくりなぞり、腰のくびれを滑っていく。
何も急がず、ただ肌を愛おしむように触れるだけ。
それだけなのに、息が浅くなる。
鼓動が速まって、思わずアスカは身を捩った。
「っ……リオール、さま……」
「……ああ。焦るな。大丈夫だから」
甘い声で囁かれながら、寝台にそっと横たえられる。
ツーっと太腿を撫でられると、導かれたかのようにゆっくり脚を開いていく。
唇が塞がれ、昼間よりも濃厚なキスを繰り返す。
思考は融け、ただリオールの手に翻弄されていく。
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