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第113話 ※

 リオールの唇がアスカの耳元をかすめたかと思えば、囁くような吐息が肌にかかる。 「アスカ……力を抜いて。怖がらなくていい」  そう言いながら、リオールの手がアスカの太腿から、内腿へと滑っていく。肌に触れる指先は、まるで羽根のように柔らかく、けれど確かな熱を帯びていた。 「っ、ぁ……ぅ……」  声が震える。だが、リオールは慌てず、ただ静かにアスカの脚の付け根に指を這わせながら、息を整えるのを待ってくれている。  やがて、リオールの指が、奥の秘めた場所へと辿り着いた。 「冷たいから、少し驚くかもしれない。だが、すぐに慣れる」  香油が塗られた指先が、ぬるりとそこに触れた瞬間、アスカの腰がわずかに跳ねた。 「っ、ふ……っ……」 「大丈夫だ、アスカ。……ほら、吸って、吐いて」  促されるままに、アスカは呼吸を整える。  恥ずかしさで顔が熱くなり、どこをどのように見られているかもわからない。  けれど、リオールの声が、熱が確かにそこにあり、その優しさに少しずつ不安が溶けていく。 「入れるぞ。一本だけだ。……ゆっくりな」 「は、い……っ」  ぐっ、と圧がかかる。  異物感に息が詰まりそうになるが、リオールの手がアスカの胸に触れて、そっと撫でてくれた。 「痛いか?」 「……い、いえ、でも……変な感じ、です……」 「それでいい。最初はそういうものだ。──少し、動かすぞ」  ゆっくりと、指が出入りするたびに、体の奥がじんわりと熱を帯びていく。くちゅ、と濡れた音が静かな部屋に響き、アスカは思わず目をきつく閉じた。 「ふっ、ぁ……ん、……あっ」  きゅっと指を締め付けてしまう。  中にある指の存在が、それだけでいっぱいいっぱいだ。   「アスカ、大丈夫か」 「っ、ぅ……だい、じょうぶ……です……」 「……無理しなくていい。今日はここまでしかしない」  その声は、あくまでも優しい。アスカは震える唇で、かすかに「……はいっ」と返事をした。

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