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第115話
寝台を汚してしまった。
アスカは段々と落ち着いてきた思考で、ハッとして隣に寝転がるリオールを見る。
「──リオールさ、んぅっ!」
「ん、」
名前を呼ぼうとした途端、唇が塞がれる。
ゆっくりと重ねられる口づけは、先ほどまでの熱を孕んでいながらも、どこか優しく、名残惜しそうだった。
「……もう少し、このままで」
囁きながら、リオールはアスカの髪をすくい取るように撫でる。
その仕草が愛しくて、アスカの胸にふわりと温かさが広がった。
「でも……寝台を、汚してしまって……」
「構わぬ。私が望んだことだ」
小さく頬を染めて呟くアスカに、リオールは柔く微笑みつつも、まっすぐな眼差しで答える。
アスカは胸が締めつけられるような感覚を覚えた。
「……練習、でしたのに。あんなに乱れてしまい……私ばかり、申し訳ございません……」
「そんなこと、気にするな。それに、私は練習でも、本気だったぞ? ……そなたに触れたくて仕方なかった」
そう言って、リオールはアスカの額にそっと口づける。
その温もりに、また瞳が潤んでしまいそうになるのを、アスカは堪えた。
「リオール様……私は、まだ……」
「……わかっている。まだ、全ては望んでいない。だから今日は、これで良い」
そっと引き寄せられ、リオールの胸元に顔を埋める。
心臓の音が近くで響いて、静かな夜に溶けていく。
「……あたたかいです。リオール様」
「ああ。そうだな。とても、あたたかい」
囁き合うようなその会話だけが聞こえる部屋。
すぐ隣にある熱と優しさに包まれながら、アスカはそっと目を閉じた。
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