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第117話
しかし、リオールには仕事がある。
昨日断罪した大臣らの処遇。葉月とその妹のこと。
本来ならば、こんな悠長に朝を迎えている訳にはいかないのだ。
「今日は忙しくなる。おそらく、会いに行くことが叶わない」
「ぁ……ええ。私のことはお気になさらず」
ほんの一瞬だけ、寂しげな表情をしたアスカ。
それを見逃さなかったリオールは、すぐに笑顔を作った彼にムッとした顔を見せる。
「なんだ。寂しくないのか。私はこんなにも寂しいのに」
「なっ、ち、違います……。だって……陛下のお荷物には、なりたくないのです」
シュン、として掛布を鼻下まで持ち上げたアスカに、心が踊らされる。
なんとも愛おしい仕草に、やはり政務など放り出したくなる。
「っ、……わかっている。冗談だ。愛おしいな」
「! へ、陛下は、意地悪になられました……!」
「はは、そうか? しかし、そなたが可愛くて」
モフっと頭まで隠れてしまったアスカ。
リオールは低く笑いながら、そんなアスカの丸い頭をよしよしと撫でる。
「私は政務に行くが、アスカはまだしばらく、ここで休んでいて良いからな」
「え、」
「初めてのことで、緊張しただろう。体も驚いてるかもしれん。ゆっくり休んでから、宮に戻れば良い」
ちろっと掛布から顔を出したアスカは、眉を八の字に下げる。
「次の……次の練習は、いつになさいますか……?」
「!」
アスカが次のことを考えてくれている。
次も触っていいのだとわかると、嬉しくて思わず『今夜』と言ってしまいそうになる。
しかし、さすがに仕事のこともある上に、急いているようにしか見えないだろうと、一度息を吐く。
「うん。では、三日後はどうだろう」
「……良いの、ですか……?」
「何がだ」
「……私は、三日の間も、貴方様に触れられることを待たなくてはいけないのが、難しく思えて」
「な、んと……」
リオールは万歳をして喜びたかった。
触れ合うのに、三日も待てないと言ってくれている。
喉がゴクリと鳴る。
「で、では、明日……」
「! はい!」
いい笑顔である。
リオールは歓喜で踊り出したくなる心を鎮めた。
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