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第120話
とはいったものの。
これまで政治のことには一切触れていないし、そもそもそのような話をリオールとしたことは無かった。
で、あるならば、アスカができることは──
「世継ぎを、残すこと……?」
「まあ……!」
「!」
アスカの呟いた言葉に、清夏と薄氷が反応する。
目を見開き、嬉しそうに。
「左様でありますね。それは、王妃様の一番のお役目でしょうね」
「……でも、簡単に言いましたけど、そうすぐにできるものでも無いし、そもそも……私はまだ、親になれるほど大人でもありませんし……」
やはり、子供を育てるには、冷静であり、器が大きくなければならない。
「何をおっしゃいますか。アスカ様は立派な成人ではありませんか。そして、ここは王宮。皆が率先して子育てのお手伝いをいたしましょう」
「……」
「皆、初めから完璧な親ではありません。子が成長する過程で、同じように親も成長します。貴方様は一人ではありませんよ」
まだ、決まった訳では無いのに、彼女たちはそう言って背中を押してくる。
子供、子供、かぁ。
「きっと、可愛いでしょうね」
「ええ。アスカ様と、陛下のお子様ですもの。とても美しくて、聡明な方に決まっております」
薄氷が想像してそう言う。
もう既に頭の中では、子供の顔を思い浮かべているようだ。
「陛下に似てくれればいいのだけれど……」
「あら。私はアスカ様に似ても、そう思いますよ」
清夏はそう言って、アスカをじっとみつめた。
アスカは静かに視線を逸らし、しかし、彼との子供なら、産んで、育てたいと心の中で思う。
「……うん。次の発情期までには、考えておきます……」
「ええ。それに、まずは練習がございますからね」
「っ!」
「痛みはございましたか? よろしければ、香油に催淫効果のあるものを用意いたしましょうか?」
アスカは口をはくはくと開閉させると、うつむいて手で顔を覆った。
いくら王族に仕える従者達が、そういったことに慣れていたとしても、アスカ自身は慣れていないので恥ずかしい。
「……」
「? 不安なようでしたら、念の為用意しておきます」
「ぁ……はい……」
なので、アスカはそれ以上何も言うことはなかった。
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