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第121話

 朝に言っていた通り、その日リオールは大変忙しかったらしく、会うことは叶わなかった。  しかしアスカは、これはちょうど良かったと思っている。  というのも、清夏と薄氷の二人とした会話を思い出しては、考えてしまうからだ。  だが、リオールとアスカはまだ番になっていないどころか、婚姻も終えていない。  あと少しで、儀式があるようだが……。  ひとりで眠るいつもの夜。  ふと、長らく会っていない家族を思い出した。  王宮に来て以来、一度も連絡をとってはおらず、彼らがどのように過ごしているのかもわからない。  文を送ることも、禁じられていた訳では無いのだが、思い出して寂しさで泣くことのないように、送らずにいたのだ。  儀式の時には、家族を呼べるのだろうか。  少しは成長した姿を、届けることができればいい。  そして、もしも子供が生まれたのなら、両親にも、弟達にも、抱かせてあげたい。 「……」  天井を眺め、深く息を吐く。  そうして目を閉じれば、夢の中で、家族とリオール、そして自分と、自分の子供が幸せそうに笑っている姿が浮かんだ。  ──そのような未来が、本当に訪れたなら。  アスカは幸せな気持ちで朝を迎えた。 □ 「陛下は、子を、お望みですか……?」 「!」  夜の練習の時間。  アスカは少し気になっていたことと、夢の話をする。  驚いた顔から、穏やかな表情に変わっていくリオールにホッとした。 「それは、実に素晴らしい未来だな」 「では……」 「ああ。私はアスカとの子が欲しい。しかし、もう少し後でも構わない」 「ぁ……」  するり、衣が脱がされていく。  肌を滑る指があたたかい。 「子は欲しいが、実を言うと、アスカとふたりの時間も、もっと、ほしい」 「そ、そう、なのですか……?」 「ああ。こんなに穏やかで、幸せなんだ。きっと子ができても幸せだろうが、二人だけのこれを、もう少し味わいたい気もする。……ああ、だがしかし、やはり……子供はきっと愛らしいだろうな」  口付けをされ、優しく押し倒される。  舌を絡め取られ、クチュっと甘い水音に頭がジンとした。

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