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第124話

■■■  朝陽が薄く覗く寝室で、リオールはゆっくりと目を開けた。  腕の中には、穏やかな寝息を立てるアスカの姿。  昨夜のことを思い返し、リオールはそっと微笑んだ。  香油の効果で、アスカは自分でも信じられないほど乱れていた。恥じらいながら、それでも快感に抗えず、必死にしがみついてくる様が、あまりにも愛しくて、胸を締めつけられた。 「……我慢して、正解だったな」  ぽつりと呟きながら、アスカの頬にかかる髪を指先で払う。  赤くなっていた瞼も、涙の跡も、今はすっかり落ち着き、無垢な寝顔がそこにあった。  この穏やかさを守りたいと思う。  ずっと、こうして、幸せな時間の中で共に朝を迎えたいと。 「アスカ……」  名を呼んでも、彼はまだ目を覚まさない。  けれど、その手がきゅっとリオールの寝衣を掴んだ。  夢の中でも、そばにいてほしいと思ってくれているのだろうか。  その仕草ひとつに胸が熱くなる。 「子供、か……」  昨夜、アスカが言った問いを、リオールは改めて思い出す。 『陛下は、子を、お望みですか……?』  あの時の、少し震えた声。  不安と、願いと、覚悟が混ざっていた。  リオールは、確かに望んでいる。  アスカとの子を、この手に抱きたいと思った。  だが同時に──今はまだ、もう少し、二人の時間を味わいたいとも思う。  ふと、アスカが小さく身じろぎをした。  リオールは、そっとその額に唇を落とす。 「おはよう、アスカ。よく眠れたか?」  瞼が、ゆっくりと開いて、琥珀色の瞳がリオールを映す。  まだ夢の余韻にあるような、ぼんやりとした表情で──しかし、見つめられるだけで、リオールは胸がいっぱいになった。  この人を愛していると、改めて思った。

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