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第131話
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こちらに向かい、躊躇うことなく、堂々とした態度で歩んでくるアスカ。
あまりにも美しいその姿に、リオールは思わず息を飲んだ。
手を差し出せば、そっと重ねられ、穏やかな笑みを浮かべる彼。
どこか体温が高く感じられるのは、事前に薄氷に伝えられた通り、発情期が近いからだということがわかった。
しかし、そんなことも感じさせない優雅さが、アスカにはあった。
何事も無いかのように臣下たちに対し礼をし、祝いの言葉を掛けられれば、柔らかく返事をする。
披露の場で御家族が傍にやってきた時も、人前であるからと感情を高めることはない。
すでに『王妃』となったアスカは、堂々たる振る舞いで隣に座っている。
そんな彼の耳元に、そっと顔を寄せる。
「体は無事か」
「っ、今は、なんとか」
ビクッと小さく跳ねた体と、ほんのり赤く染る頬。
その『なんとか』が、相当の無理を含んでいることは明白だった。
「アスカ、少し私にもたれなさい。多少体勢を崩したからといって問題にはならない」
「──いえ。これは、私の責務です」
辛さを少しでもやわらげてやりたかったが、確固たる心で拒否をした彼に、リオールは苦笑する。
「無理をするな」
「無理ではありません。まだ、大丈夫です」
「だがな……」
「……それであれば……夜に……たくさん甘やかしてください」
「!」
アスカの整った横顔を見ながら、リオールは口元を緩める。
……今夜は、決して忘れないものにしよう。
そう思いながら、静かに盃を傾けた。
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