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第134話
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式が終わり、控え室に戻った途端、アスカは崩れるように床に座り込んだ。
「王妃様!」
「いかがなさいましたかっ!」
慌てた様子の清夏と薄氷に問いかけられるも、返事もできず、震える手で衣を脱いでいく。
「お、もたくて、暑い……」
「香りも強くなってきております。このまま、後宮へ向かいましょう」
「ぅ……」
「軽いお召し物を用意しますので、もう少しお待ちくださいませ」
式が終わって間もなく、まだ宴会が続けられているというのに、情けないことに限界が訪れてしまった。
本格的な発情期に入るまでは、まだ少し時間がある。
しかし、悠長にはしていられない。
「王妃様、こちらに着替えましょう。すぐに終わりますからね」
「は、す、すみません」
「良いのですよ。楽になさってください」
清夏に着替えを任せ、アスカは用意してもらった水を飲み、支度が済むと後宮に向かう。
そこには王妃や王の側室となった人間が住まうことになっており、これまで仮住まいとしていたところより随分と広く豪華な作りになっていた。
「は……はぁ……っ」
「ただいま、隔離部屋の準備をしております」
「……ぅ、ごめ、なさい……」
家族には式の途中でも会えたが、見送ることは叶いそうにない。
せっかく来て貰えたのに、申し訳無く思えて、視界が滲んでくる。
奥がじんわりと熱を帯び、勝手に潤んでいくのがわかる。
しかし間もなく準備ができたとの知らせが来て、隔離部屋に移る。
もう何度も入ったことのあるその部屋は、相変わらず殺風景だが、しかし今夜はリオールが来てくれるはず。
寝台に寝転がるが、じっとしていられない。
そばにリオールの香りがないのがつらくて、彼に抱きしめてもらえないと、どうしようもなく寂しくなる。
体と心が、いうことを聞いてくれない。
「ふっ、う、ぅ……」
涙が溢れていく。
彼は、まだだろうか。
あと、どれだけ我慢すれば、良いだろうか。
「っん、清夏……」
「──はい、ここにおります」
名前を呼べば、直ぐに顔を出した彼女に、ホッとした。
「へ、陛下は、まだ、でしょうか……っ?」
「っ、すぐ、お越しになられます。もう少しお待ちを」
「ん……うん……」
涙は、止めようとしても止まってくれない。
清夏は目を見張ると、何かを思い出したように『失礼します』と部屋を出ていった。
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