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第138話 ※

■■■  項が、まるで噛まれるのを待っているかのように、呼吸に合わせて上下する。  発情期に晒されたその部位は、見る者の本能を揺さぶるにはあまりにも無防備だった。 「愛しい……あまりにも、愛しすぎて……壊してしまいそうだ」  そっとアスカの腰を引き寄せながら、もう一度、熱を深く与える。  ぬるりと押し入ったそれが奥を突くたび、甘い喘ぎが零れ落ちた。 「あ、ぁっ……ん、あっ、リオール、さま……っ!」  ぴたりと張りついた肌と肌。  腰がぶつかるたび、項がリオールの目の前で震える。  触れたい、刻みたい──!  その衝動をリオールはなんとか押さえながら、アスカの腰を抱えたまま低く問う。 「アスカ……今なら、まだ戻れる。番になる覚悟は、あるか……?」  その問いに、アスカはゆっくりと振り返った。  頬を紅潮させ、潤んだ瞳で、ただ一言── 「……はい。リオールさまの、番に、してください……」  その一言が、すべてだった。  リオールは奥歯を強く噛み締めたのち、そっと顔を寄せ、震える項に口づける。  そして、唇を開いた。 「……っ、ぁ、あぁああっ……!」  リオールの歯がアスカの項に深く沈み込んだ瞬間、ふたりの体が一気に熱を爆ぜさせた。 「アスカ……っ」 「ぁ、リオール、さま……っ、熱い……っ!」  項から滴る血に、リオールはそっと舌を這わせ、傷を癒すように口づけを重ねた。  アスカの身体はびくびくと痙攣し、熱い内壁が強く締めつけてくる。 「こんなに……感じて……アスカ……」 「ぅ、あっ、あぁあっ……っ」  アスカの中で、再び射精する。  ぐぷ、と深く押し込んだままの熱にアスカが絡みついて離してくれない。  ふたりの息が絡み合い、汗ばんだ肌が重なり、甘い余韻が部屋に満ちる。  アスカは頬を朱に染めながら、ゆっくりと体を寝台に倒れ込んだ。  リオールはそんなアスカの体に腕を回し、そっと抱きしめる。  挿れたままの繋がりを保ちながら、ぬくもりが胸を満たしていく。 「これで……もう、離さない」 「……はい。しあわせ、です……。リオール、さまの番に……なれて……」 「私もだ」 「リオール様……ずっと、そばに……いてください」  静かに、しっかりと、番となった証を胸に刻み合うふたり。  夜はまだ、長い。

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