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第143話

■■■  朝食はとても穏やかで甘い時間になった。  そばに控えている陽春や清夏が時折顔を逸らすほどに、二人は仲睦まじい様子を見せている。  座っていることは出来るのだが、腰が辛いと顔をゆがめたアスカの為、自ら背もたれ代わりになろうと、アスカを抱えるように座ったリオール。  そんな姿を皆に見られていることが恥ずかしく、アスカは俯いたままちょっとずつ用意された粥を食べていたのだが。 「もう少し食べなさい。ほら、私が食べさせてやろう」 「んっ、もう、おなかが膨れてて」 「しかし……ほとんど食べていないじゃないか」 「私は大丈夫ですから、陛下もお召し上がりくださいな」  先程から、リオールはアスカの食事を気にして、自分のことは後回しにしている。  アスカは発情期中に食事ができなかったことかは、胃が小さくなっていることに加え、疲労が溜まっており、粥の四分の一ほどを食べて手が止まっていた。 「私が、陛下のお口元に運びましょうか」  あまりにも食べろと言う彼にアスカはムッとして、つい口を滑らせた。  怒られるかもしれないと、少しドキドキしていたのだが── 「それはいいな」 「え!?」 「王妃の手から食べたい」  アスカの耳がみるみる赤く染まっていく。  けれどリオールは真剣そのものの表情で、ほんの少し体を傾けて待っている。 「……も、もう、知りません……」  呟きながら、アスカは匙を手に取り、そっと皿の上にあった温かい卵と野菜の汁をすくう。  アスカの食事は体に優しい粥だったが、リオールの前にはしっかりとした朝食が用意されていた。 「どうぞ……」  一口受け取ったリオールは、咀嚼しながら穏やかな表情でアスカを見つめる。 「うん、美味しい。王妃の手からだから、なおさらだな」 「っ……も、もうっ」  顔を覆い隠すアスカのそばでは、控えていた清夏が「あっ……」と短く声を漏らし、思わず顔を逸らす。  陽春に至っては、無言で視線を空中に泳がせていた。 「……二人とも、お願いですから、こちらを見ないでください……」 「拝見するつもりはございませんが、自然と目に入ってしまいますので……」  控えめに交わされる小声の会話を、リオールは何故か楽しそうに聞き流す。  アスカは番となり、夫夫となったことで、甘さの増したリオールに照れっぱなしだった。

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