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第144話

□  寝椅子に身を預けながら、アスカはじんわりと残る腰の痛みに手を添えた。愛されすぎた証なのだと思えば、少し頬が熱くなる。 「医務官をお呼びしますか?」と、清夏が心配そうに問いかけてくる。 「いえ。これは……愛された証のようなものですから」  アスカがそう言うと、清夏と薄氷が一瞬だけ目を見合わせた。軽く笑ったようにも見えたが、何も言わずに膝をついて控え直す。 「──王妃様が政務を行うのは、ご体調が回復されてからとの王命です。暫くは、どうかお休みくださいませ」 「ぁ……ですが、あまり動かなくて済むことであれば、少しでもさせてください。それに、王妃となったからには、しっかりと働かないと」  どこか無理をしているように聞こえたのだろう。薄氷は優しく微笑み、静かに頷く。  ──王妃。  そう呼ばれるたび、胸の内に湧き上がるのは、未だ自分にその器があるのだろうかという迷いだった。  確かに、リオールに愛されている。それは、あの夜に交わした絆が何よりの証拠だ。だが、だからといって、王妃としての責務を果たせるかどうかは別の話だ。  リオールの隣に立つ者として、自分は十分なのだろうか──。 「……でしたら、もし清夏と薄氷に時間があるのなら、これから私がどのような政務を行っていくのか、教えてほしいです」  その言葉に、清夏が眉をひそめる。 「王妃様。敬語は必要ありませんと、以前お伝えしました」 「ぁ……慣れなくて……」 「慣れてください。──さあ」  促されるままに、アスカは少しだけ息を整える。 「清夏、薄氷。私がするべき政務の内容を、教えてくれ」 「かしこまりました」  清夏は姿勢を正し、淡々と語り始める。  

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