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第200話 ※
熱を繋げたまま、リオールはアスカの頬にキスを落とす。
次いで、額、瞼、唇……そのどれもが慈しみに満ちていて、快楽の中にいるはずのアスカは、また涙をこぼした。
「こんなに……優しくされたら……おかしくなります……っ」
「仕方あるまい。愛しくて、堪らないのだから」
深く、ゆっくりと腰を押し込む。
熱が擦れるたび、アスカの身体が内から震える。
「っ、ふ、ぁ……そこ、だめ……っ」
「……ダメ? こんなに締めつけてきているのに?」
わざと耳元に吐息をかけると、アスカはびくりと跳ねて、脚を絡めてきた。
その脚を片方、肩に乗せて角度を変えれば──
「あっ、や、やあっ……! そんなの……っ、んんっ!」
高く跳ねる背中、指先は敷布を強く掴んでいる。
リオールは揺れる胸元に口づけながら、甘く、深く、熱を注ぎ続ける。
「こんなに感じて……可愛いな、アスカ。全部、私のものだ……」
「っ、リ、オール様……んぁ、あ、そこっ……またっ、だめっ……!」
何度も突き上げられるたび、アスカの瞳が蕩けていく。
腰が勝手に動き、熱に呑まれて、理性が溶けていく。
「こんなにも感じやすくなって……産後のアスカは、ますます愛しい」
「んぁっ、だってっ、リオール様が、っ、そんなに優しいから……っ、もう、ぁ、あぁ……っ!」
肌と肌が重なり、いやらしい水音が響き渡る。
愛撫されるたびに、蕩けた声がこぼれ、身体の奥で波打つ快楽に、アスカは息も絶え絶えだった。
快楽の波に呑まれながら、アスカの爪がリオールの背をかすかに掻く。
それが合図のように、リオールの動きがわずかに強く、深くなる。
「アスカ……もう、堪えきれない……」
「っ、はい、私も……っ、あぁ、リオール様っ……!」
心も身体も一つになって、溶けあって──二人は、同時に絶頂へと達した。
快楽の波に呑まれながら、アスカはリオールの胸に顔を埋める。
「……好き、です……ずっと……」
「私もだ、アスカ。お前がすべてだ」
繋がったまま、何度も唇を重ねて、そっと熱を鎮めていく。
夜は深く、静かに流れた。
□
朝、鳥のさえずりに目を覚ましたリオールは、腕の中にいる愛しい存在に目を細めた。
胸にすっぽりと収まり、規則的な呼吸を続けるその存在に、また眠くなってしまいそうになる。
頬に触れれば、薄らと開かれた目。
その眠そうな目がリオールを見つめていた。
「おはよう……よく、眠れたか?」
「……はい。なんだか、とっても、幸せで……」
「私もだ。そなたが、私の腕の中にいる」
そう言って額に口づけを落とすと、アスカが恥じらうように小さく笑う。
「……昨夜のことは、忘れてくださっても構いませんからね。は、恥ずかしいので……」
「いや、忘れん。むしろ一生覚えていたい。今夜も続きを頼む」
「なっ……!」
顔を赤らめるアスカを引き寄せ、また布団の中へ。
幸せな朝は、もう少しだけ、続いていった。
少しして、朝の支度を終わらせたふたりの元にアルマがやってくる。
まだ眠たいのか、ぷくぷくと呼吸を繰り返している姿が愛おしくてたまらない。
「おはよう、アルマ」
そう言ってアルマを抱くアスカ。
そっと二人の傍に近づき、アスカの肩を抱く。
「私はきっと、誰よりも果報者だ」
「それは、私です。貴方様に出会えて、アルマとも出会えましたから」
頬に口付けをされ、リオールは微笑んだ。
冷たくつまらない事ばかりだった王宮で、こんなにも愛しい存在と共に在れること。
それが何よりも嬉しい。
「アルマの未来にも、幸多からんことを」
──そうして、新しい一日が始まった。
あなたの番になれたなら 完
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