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翌日、火曜。
ロンドンから原稿を急かされた僕は、なるべく執筆に集中した。
ランチは、フィッシュ&チップスとサラダを、お茶の時間は、今日のケーキセット(りんごとシナモンのマフィン)をいただいた。
会計時。ニコニコ現れた店主は、《ずいぶん集中してましたね》と書いて眉をひそめた。
今日も彼の姿は大して見かけなかったが、彼も僕をそれなりに見ているのだろうと思うと、少し気恥ずかしかったが、嬉しい。
「ええ、ちょっと…ぃや、だいぶ遅れ気味で、取り戻さなきゃいけなくて…」
『大変だ』と眉を上げた彼は、《一日中そんなに集中できない》と書いて苦笑した。
「そういう時だけ、一年中こうじゃないから平気です」
《宿でも仕事を?》とメモ。
「しません…というか、実は、ここじゃないとできなくて」
冗談だと思ったのか、彼は、『そう』とパッと顔を輝かせた。
そして、《宿はどこ?》とメモ。
「あぁ、B&B※の『オズニー・アームズ』です、ここから一番近い…前回は駅と中心地の間くらいの『マリオット』だったけど、ちょっと距離があるから…毎日レンタサイクル借りるのも面倒で」(※ベッド&ブレックファスト:朝食付きの安めの宿)
『ああ』と口を小さく開けて、なるほどという顔をした彼は、《今は歩いてここに?》と小首をかしげた。
「えぇ、20分くらいですし、前の宿より簡素だけど寝れたら十分です」
クスクスしながら《全然遊んでない》と書いた彼は、呆れたような苦笑いをくれた。
「ですね…飲みにでも行きます」
ニッコリした彼は『それがいい』と何度か深く頷いた。
気のせいじゃなく、少しずつ砕けてきている彼の言葉や表情を見ているだけで、幸せな気持ちになった。
「また来ます、サラダを食べに」と言うと、すっかり冗談だと思ったらしい彼は、声があるなら『ははは』と大きく笑った。そして、『お気をつけて』と僕を見送った。
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