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Ch.6
翌日の金曜。
昼過ぎまで宿でごろごろして、『HILLOCK』にはお茶の時間の頃に行った。
オーダーを取りに来た男性店員が「こんにちは、ノーマンさん」と挨拶をくれ、「ランチメニュー、まだ出せますよ」と教えてくれた。
「ノーマンでいいよ」と言い、彼の名前を聞いて(ティムだそう)、実質ブレックファストのソーセージと目玉焼きのセットを頼んだ。
いつの間にか、僕の名前は店主の彼によって共有されていたらしいが、連日これだけ入り浸っていたらバックヤードで話題にされていても不思議はない。アルバイトの彼らはともかく、店主は僕のことをどんなふうに話しているのかはとても気になる。
すると、ランチを持ってきたティムが「13時になっても来ないからウィルが心配してましたよ」と教えてくれ、単純にも幸せな気持ちになった。
いつものように、閉店間近の会計時。
店主は、僕の顔を見るなり《何かあった?》とメモを突き出した。
その心配そうな顔を見れば、また、じんわり幸せを噛み締めてしまったが、真顔を繕った。
「大丈夫、宿でゆっくりしてただけ…」
『ならよかった』
ホッとしたのか、途端に太陽みたいにニコニコした人が眩しい。
「休めって言ったのは貴方なのに」
『そうだけど』と苦笑する彼がいじらしくて、つい、甘えたくなる。
「…昨日は、僕の話ばっかりしちゃってた」
『楽しかった』と笑った彼は、さらさらとペンを走らせた。
対面では、スマホよりメモがいいらしい。確かに、こちらも書く所が見えて、やり取りが早かった。
《あんなに、誰かといっぱい話したのは久しぶり》と書き終えた彼が、メモをこちらに見せる前に言った。
「貴方は、アルコールは平気?」
突然の質問にぽかんとした彼は、『むしろ好き』とニッコリ笑った。
「じゃあ、よかったら飲みに行かない?…貴方の都合がいい時に…」
『えっ』と驚いて、『いいけど』と小さく動いた唇に、躊躇(ためら)いが見えた気がした。
「あぁ!別に無理に誘う気はないから、遠慮なく断ってーーー」
『じゃあ、明日』
「明日!?」
『明日』と繰り返して、彼は小さく笑った。
明日は土曜。店の営業は15時までの、早じまいの日だった。
「ここをクローズした後?」
《クローズ後は買い出しに行くから、その後で》とメモ。
「そっか、じゃあ…貴方は、どこがいいかな?」
少し考えて、彼は《たまに行くパブとか》と書いた。
「そうしよう、貴方が好きなとこに」
小さく頷いた彼に、「気が乗らなかったら、ドタキャンでもいいから」と言うと、
少し怒った顔をしてみせた彼は、《そんなことしない!》と書いた。
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