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Ch.11
それから、毎日。
ウィルとのやり取りは、互いにまとまった時間がとれる夜に主にするようになった。顔が見たくてビデオ通話もたまにしたが、彼が何かを伝えるためにはやっぱり文字が必要で、基本的にはSMSがメインだった。
そして、数日もすれば、やり取りはSMSで行い、寝る前にビデオ通話で「おやすみ」を言う形が定着した。
それでも、ウィルが側にいない寂しさは、日に日にこたえた。
だから、「おやすみ」を言うために繋いだ動画の時間は少しずつ伸びて、「愛してる」や「会いたい」を囁くたびに、『僕も』とか『愛してる』と切なく笑う顔を眺めては、たまらない気持ちになった。
そして、こうして離れてわかったのは、ウィルの声が“聞こえなくなった”のが、何よりも辛いということだった。
スマホやPCのディスプレイに彼が見えていて、優しい目で僕を労っても、愛しい唇が笑っても、愛を囁いても。どういうわけか、側にいる時には聞こえていた声がさっぱり聞こえず、僕らを隔てる距離を呪わざるを得なかった。
どうして、彼は側にいないのだろう?そんな虚しい想いと、寂しい体を抱えて眠る夜が続いたが、結局、全ては自分が悪かった。当初、土日はウィルと過ごすつもりでいたが、何かと仕事の都合で叶わなかったのだ。
最初の4週間は、オックスフォードにいる間にすっ飛ばしていた予定の穴埋めや対応に追われた。次の4週間は、舞台の上演が近づくにつれイベントやメディア対応などが増えて、土日が潰れた。
たびたび、ウィルに行けないことを伝えて謝ると、彼は文句ひとつ言わず、拗ねたり怒ったりもしなかった。その代わり、少しずつ少しずつ、その目は寂しい陰を宿すようになり、当然のように、彼からのSMSの頻度も減っていった。
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