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相変わらず裸同然のネロが仕事を切り上げたのは、夜の21時過ぎだった。 デリバリーでピザと中華を山程頼み、ビールとシャンパンを応接テーブルに用意した俺達は、チープでジャンクな晩飯を囲んだ。 「僕の帝国の第一歩に」とネロがシャンパングラスを掲げ、「今日の成功に」と返して乾杯をした。 「なんか同棲みたいで楽しい」と目をキラキラさせたネロは、片っ端から掃除機みたいに食べていく。 大したバイタリティだなと呆れたが、すっかり空腹だった俺も、俺の分を彼に奪われる前に腹に入れた。 「うまくやったもんだな」と褒めると、ネロは「何が?」ときょとんとした。 「今日のことだ、うまく連中を丸め込んだ」 どうってことないと言いたげに肩をすくめたネロは、ビールを瓶で煽った。 「簡単だよ、金を使えばなんとでも…こういうピラミッド型の組織は、1にビビらせて、2に幹部さえ抑えちゃえば簡単に支配できる」 「見事なスピーチだった…お前は立派な王サマになれるだろうな」 「だから言ったじゃん、僕の帝国を作るって」 得意気に顎を上げたネロは、高い鼻をフフンと鳴らした。 「しかしまぁ…ファミリーだとかみんながハッピーだとか、思ってもいないことがよくもああスラスラと出てくるもんだな、立派な詐欺師だ」 俺の言葉に、ネロは眉を釣り上げた。 「本気だ、本当にそう思ってる、国もビジネスも変わらない、末端まで潤えば結果的に国も組織も潤う、当たり前のことだ」 「理想だなーーー」 「理想があるから人はついてくる」 「…とは言っても、多少“ファミリー”の士気が上がったところで、大して売りは伸びないだろ」 「もちろん、既存の古いアナログなシノギには期待してない、早々に新規にダークネットを使った地下ビジネスを展開する、“ファミリー”にはそれの手足になってもらえばいい」 「…わざわざギャングじゃなくたって、お前は表で健全な経営者か政治家にでもなったほうがいい、それか役者が向いてる」 「だから〜、興味がないことには興味がないし、こっちのほうが楽でいいわけ」 「何が?」 「法より何より金が全て、それだけ」 冷めた顔でビールを飲み干したネロは、媚びた流し目をよこすと、「ファックしよ」と微笑んだ。

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