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「アーサーの部屋でしたい」と言われ、拒否したものの聞き入れられず、俺の部屋に行った。
俺の顔中にキスを押し付けながら、乱暴に服を剥ぎ取ったネロは、ベッドに押し倒した俺に馬乗りになった。
「どおしてここじゃヤなの?」
「ここにはお前を殺れる武器が山程ある」
そして、こいつは必要とあらば笑いながら俺を殺す、そういう人間だからだ。
「例えば…コレだ」
枕の下からナイフを抜き出したネロは、うっとりと刃を眺めた。
「こんなの枕に隠してるなんて悪趣味」
「刃を舐めたりしたら殺す」
「なんで」
「痛む」
「嘘だ、つまんな」
ネロは枕の脇にナイフを突き立てると、這いつくばった俺の胸に「ご褒美ちょーだい」と舌を這わせた。
「なんの?」
「ボクの上に立つ者はいなくなった」
「めでたいな」
「もう、ボクを思いのままにいたぶって、辱(はずかし)めて、弄(もてあそ)べるのはアンタだけ」
「そんな趣味はないーーー」
「するんだよアーサー、頑張ったボクにご褒美、ちょーだい…」
「どうしてほしい?」
「こーやって、体中舐め回して」
虚ろな顔で俺の乳首を舌で転がす男は、発情したメス猫みたいに腰を高く突き上げる。
「スプリフは?」
「いいから、早く」と乳首に歯を立てたネロを抱えてひっくり返し、押し倒した股間に顔を埋めると、男は「そこは最後」と俺の脇腹を蹴った。
足の裏から始めて指を1本1本しゃぶりながら、指の間に潜らせた舌を滑らせてやると、ネロは腰をくねらせて悦んだ。
「一日ずっと、アンタとファックすることばっか考えてた…」
「依存症だ、治療行け」
足の甲からふくらはぎへ。俺の舌に合わせて跳ねる脚を抱えて膝頭にかぶりつき、早くも息を荒げている男を見下ろしてやる。
「早くこっち、来てよーーー」
「体中って言ったのはお前だ」
柔らかな内腿を吸って、前面の鳥肌を舐め上げてやる。鼠径部の下着のラインに突っ込んだ鼻で男を嗅げば、男のモノが下着の中で膨らみ始める。
「…どんなニオイ?」
「知りたきゃ後で自分のパンツ嗅げ」
股間を避(よ)けてへそを舐(ねぶ)り、腹から胸へとジグザグに舐めていく。
俺の髪を荒っぽく掴んだネロは、浮かせた腰を揺らして俺をねだる。
「脱がしてって」
「後だ」
脇から円を描きながら、乳首を目指して唾液を塗り込める。冷たいピアスごと乳首に吸うと、甘いため息と共に男のふしだらな本性が現れる。舌にめり込む突起は固く、舌先で弾いてやれば、男は熱(いき)り勃ったモノを俺に押しつけた。
「噛んでよ」
「…注文が多い」
咥えて強く引いたピアスを離し、胸の中心から首へと這わせる舌を炙る肌の微熱が心地いい。
タコみたいに絡みついて俺を引き寄せたネロは、俺の口元に焦れた吐息を突きつける。
「アンタのヨダレ塗(まみ)れ、嬉しい…」
「腕と背中と尻がまだだーーー」
「早くちんぽぶちこんで、もぉ我慢できない」
「ペニスも尻穴も舐めてないーーー」
「いいから早くっ」
背中に爪を立てられて、わがままなガキだと腹が立つ。
腰を押し上げて下着の股を天に晒してやると、男は「苦しい」と顔を歪めて笑った。
「自分で抱えてろ」
「やだよ」と脚を抱えたネロの目は、期待と昂奮で濡れていた。
枕元のナイフを抜いて見せてやれば、挑発でもするように舌舐めずりを返す男はイカれている。
「これはシロートが触るようなモンじゃない」
「あ…」
下着で覆われた凹みからタマへブレードの背を滑らせると、ペニスの膨らみの向こうで男が目を細めた。
「タマ、落としてやろうか?」
寝かせた刃を下着に潜らせて股布を持ち上げてやると、ぴくぴくと跳ねるペニスが抵抗する。
「そしたらちんぽ切ってやる…」
ヘラヘラ笑いながら、ギラギラと俺を睨む目に嘘はない。
「お前の好きな俺のを?」
ナイフを返して股布を切る。ぱつんと溢(こぼ)れだした陰部の猥褻な色とカタチを、昨夜とは違う角度で観察する。
「お気に入りのパンツなのに!」
「この穴は普段はちゃんと閉じてるんーーー」
「早く挿れろよ、このオッサン!」
男が脚をばたつかせて、アヌスの皺がもぞもぞ伸縮する。
褐色のそこは間近で見ても醜悪なのに、あのどぎつい快感を思えば、股間がたまらなく疼いた。
「…お前はいたぶられたい」
ナイフの柄尻でアヌスを拡げようにも、太すぎるそれは僅かに埋まりもしない。
「ばか、オッサン、何してんーーー」
「ビッチのメスガキは口が減らないな」
力ずくで柄を押し込むと、ずぶりと肉が割れる鈍い感触が響いて、ナイフが尻に埋まり始める。
「あッ!?ばか、そっ…何やっーーー」
「覚えとけ、こうやって使うモンでもない」
沈めるグリップの凹凸がごりごりと肉を掻く感触に、ゾクゾクするほどの昂奮を覚える。
「…ア、バカ…ぁーーー」
俺を悔しく睨(ね)める男は、薄ら笑いを浮かべて楽しんでいる。
「お前は本当に淫乱な娼夫だな」
「ア、だめ…あ、それぇ…」
みるみる崩れていく男の顔を眺めながら、取り憑かれたようにごりごりと尻を抉(えぐ)る。
「怪我したくなきゃケツを締めてろ」
ギリギリまで柄を埋めたナイフを揺らしてやる。会陰から蠢くタマを舐めてやると、目の前でペニスが跳ね上がった。
「あ、あア…あたってる、ア、もっとずぼずぼしてっ…」
汗ばむ男の背に俺のモノを擦(こす)りつけて、タマをしゃぶる。冷たいそれを吸っていれば、尻の中をひくつかせた男のモノが満ちていくのが見えた。
「…ッ…あ、ア、アアあッ…!」
不格好に開いた脚の向こうで、ネロは自分の顔に精液を放射しながら昇天した。
ナイフを抜いて、ぱっくり開いた尻が閉じきる前にペニスをぶち込んだ。
「…あーさー」
今、初めて正常位で犯す男は、精液で汚れた顔で、本当に綺麗に笑っていた。
「…あーさーっ」
ふらふらと俺を捕まえた瞳は、蕩けるような甘い光を湛えている。
「…あ、あいしてるって、いって」
俺の頬を引き寄せたネロは、唇が触れそうなところで命令した。
「愛も金で買えるのかーーー」
「かえないモノなんて、ないっ…」
ネロは、本当にそう思っている、そんな顔で笑っている。
「…あ、あーさー、あいしてるって、いってーーー」
「愛してる」
鼻の精液を舐めてやり、空虚な言葉を呟くと、ネロは目を潤ませて笑い、俺に舌を伸ばした。
「愛してる」
囁いて、忠実に奮い勃ったモノで攻めたてる俺の下で、淫らに喘ぐ男が昇りつめていく。
「愛してる」
だらしない舌を吸って腰を振れば、男のカラダはみちみちと俺を絞り上げて、痺れた体と頭まで吸い取られる。
「愛してる」
重ねた唇の息を止めるつもりで舌を捩じ込み、壊れるほど叩きつけた腰を深く押し込んで射精した。
今夜もネロは、行為の後は恋人同士がするような甘い後戯を欲しがって、そのまま俺の腕で無防備に寝落ちた。
結局、それから毎晩、俺がネロに腕枕をしてやらない日はない。
ネロは、以前の雇い主に比べて専門外の要求は格段に多いが、金払いはいい。
だから、何も問題はない。
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