14 / 66
第二章 穢した愛 1 ⭐
ユリセスと別れてから、アドニスの心はずっと乱れていた。
寝ても覚めても、ユリセスの声と温もりが蘇ってくる。
それだけならまだよかった。
けれど胸はざわつき、身体の奥から、ふつふつと熱が湧いてくる――抑えられないほどに。
その度にアドニスは何か罪悪感にかられるようになった。
まるで、高貴なユリセスを汚してしまう気がして、考えるのを止める。
しかし、それも一瞬で、気づけば何をしていてもユリセスの残像が目の前に現れる。
そして、その夜――
アドニスは初めて自身を慰めた。
ユリセスの声。
温もり。
絡んだ指先の熱。
髪の毛一本まで想像して果てた。
滲んだ白濁が、掌にねっとりと残る。
アドニスはそれを見つめながら、後悔の波に呑まれた。
――ユリセス様を汚してしまった……。
初めは罪悪感と後悔の念が渦巻くも、それは一瞬で、ユリセスを思い出して身体の中心が熱くなると、すでに手は自身を握っていた。
まるで発情した猿だ、と心で罵 っても――身体は止まらなかった。
欲望はエスカレートして、ついにはユリセスが自身を扱いてくれる妄想まで始めた。
耳元で残像のユリセスが囁 いている。
――アドニス様、ここがいいのですか?
「あっ……そ、そうです……ユリセス様……っ」
――その可愛らしい声をもっと聞かせてください……。
「ああっ……ユリセス様……ユリセス様ぁっ……!」
名前を呼ぶたびに、心がひび割れていく気がした。
ユリセスが声と共に優しく自身を握って慰めてくれる。
そう考えれば考えるほど、快感は増していく。
罪悪感なんて、とっくに溶けていた。
今のアドニスに残っているのは、ただ、快楽を求める本能だけだった。
――ダメなのに……それ以上は……。
そして、禁忌 の蕾に手を伸ばし始める。
――神様……どうか、お赦しを……。
ともだちにシェアしよう!

