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第二章 穢した愛 8 ⭐

「我慢してる顔、すごく綺麗……そのぶん、イッたら気持ちいいんだよ?」  ――うるさい……! 僕は、屈しない……絶対に……。  男は擦る動きを止め、かわりに指の腹で一点を強く、押しつぶすように刺激してきた。   「んんっ! んんーっ!」 「出しちゃえば楽になるよ? もう我慢できないでしょ?」    耳元でささやくその声は、まるで悪魔。  そのたびに、否応なく快楽が体を駆け抜ける。  拒絶と、悦びと、罪悪感が、ぐちゃぐちゃに混ざって――    ――ダメ……! 出る! 出ちゃう! いやだ! ユリセス様! 「ん……っ、んんっ……っ、んー……!」    もう足までブルブルと震えだした。  必死に身をよじって抵抗するが、身体は全く動かない。  限界が近くなり、アドニスの目から涙が零れ落ちた。    ――いやだ! ユリセス様! ユリセス様ぁ!    男がぐっと押し込んだ瞬間。 「んっ……んんーッ……!」  爆ぜた。  頭の奥が、真っ白に――。    張り詰めていたすべてが解き放たれて、アドニスの屹立から勢いよく白濁が(ほとばし)った。    びしゃっと床に散る音。  鼻をつく、生々しくて――恥ずかしい匂い。    男の手はもう離れているのに、アドニスの体はまだ震えていた。 「イッちゃったね」  優しく囁かれた声が、今はただ残酷に響いた。  肩が小刻みに震え、頭の奥がまだふわふわと痺れている。  そんな余韻の中――唇の端にひっそりと触れた指先が、口枷(くちかせ)の紐を解いた。    カチャリ、と小さく金具の外れる音がした。

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