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第二章 穢した愛 9 ⭐
「そろそろ神官様のはしたない声聞きたいな」
「い……いやだ……僕は……絶対に屈したりなんか……」
臀部の間に灼熱の棒が押し付けられた。
その瞬間に身体がびくっと震える。
「やだ……っ、お願い……もうやめて……!」
「いいね、そういう声。俺のためにもっと震えて?」
男は、火のように熱い肉を、わざとらしく前後に揺らしながら押し当ててきた。
蕾に先端がつく度に挿入されないかと、身体が恐怖で強ばる。
「お願いやめて……。そこはユリセス様に……」
「ああ、いいセリフ。犯したくなるからもっと言って」
アドニスの新しい涙が、布に染みこんでいく。
――ユリセス様……。
助けなんて、来るわけがない。
声を上げれば上げるほど、男は愉悦に染まっていく。
それがわかっていても、口を閉じることはできなかった。
「ほら、抵抗しないと挿れるよ?」
「いやだ! やめてっ!」
「……本気で嫌がってて可愛いね。でもさ……穴ヒクヒクして欲しそうにしてるんだけどなんで?」
身体がかっと熱くなる。
――そんな馬鹿な。僕が、この男を求めてるだって……?
「ねぇ、本当は欲しいよね? 挿れてみたいよね?」
突然、湿った吐息が耳に触れた。
ぞくりと背筋が跳ねる。
ユリセスの本物は張形よりどれだけ熱いのか、硬いのか。
想像しながら、自分を慰めた夜を思い出す。
今、臀部に押し付けられた熱が、じわじわと中に入ってくるのを想像して身体が震えている。
――何を考えているんだ、僕は。
突然耳に息を吹きかけられて、ビクッと震えた。
「んうっ……」
「耳弱いんだ?」
尽かさず、男はアドニスの耳を舐め始めた。
耳朶にザラザラした生暖かい舌が当たって、アドニスの身体が跳ねる。
「やめて……! いやっ……!」
「神官様は責められるのが好き?」
男は、わざとらしいほど大きな音で、ちゅっ、ちゅるっと耳を吸った。
ぬるりと舌が這うたび、粘膜のような音が脳に直接響いてくる。
思考が霞 んでいく。
耳だけが、世界と繋がっているみたいだった――。
「いや……いやぁ……」
「あれ、声が蕩 けてない?」
男は嬉しそうに耳に舌を這わせて下から上へと舐め上げる。
その度にアドニスの身体がビクビクと震える。
――耳……気持ち……いい……。いやだ……。こんなやつに……。
男が耳朶 をじゅるっと音を立てて吸った瞬間。
「あっ! ああっ……!」
つい、喘ぎ声が漏れてしまって、恥ずかしさで顔が真っ赤に染まる。
背中越しに男がクスクスと笑う声が聞こえた。
「ふふっ、可愛いなぁ……。もっと聞かせてよ」
――やだ……なのに、気持ちいい……どうして……。
耳が弱いとわかると、男は重点的に舌で責め立てた。
「あっ……ああっ……やだっ……! やだぁっ……!」
「ほら……もう腰、勝手に動いちゃってるよ?」
気づけば、腰が――拒むつもりのはずの自分が、男の熱を追い求めている。
「じゃあ、期待に応えて挿れちゃおうかな」
「やめて! お願い……なんでもするから……それだけは……」
「なんでも? 免罪符くれるの?」
アドニスの身体が、小刻みに震えた。
――やっぱり、この男の目的は……。
免罪符。
渡せば、村が壊される。
渡さなければ、この身体が汚される。
どちらを選んでも、罪は避けられない。
どちらにも、地獄が待っている。
脳裏に、ユリセスの瞳が浮かぶ。
救いのように静かで、どこまでも遠い眼差し。
出口のない問いが胸を締めつける。
汗が額を伝い、ぽたぽたと床に落ちた。
――僕は……神に仕える身なのに。どうして、赦しを求める側にいるんだろう。
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