23 / 66

第二章 穢した愛 10 ⭐

「はい、時間切れ」 「えっ……」  油断した刹那、蕾が力づくで押し割られた。  メリメリと、裂けるような痛み――その奥に、熱く硬いものが、容赦なく侵入してくる。 「いやっ! やめて! やめてぇっ!」 「あと……もう少し……ほら、ほぐれてきた」 「いやぁっ! 離してぇっ!」    身体を左右に振れば振るほど、男の肉棒は簡単に秘肉に進んでいく。   「来ないで! いやっ……ああっ!」    全てが押し込まれた瞬間、アドニスの全身が跳ねた。  熱が、脈動が、鼓動が――まるで異物に身体を乗っ取られるみたいで。   「あー……気持ちいー。神官様の中キツキツじゃん。最高」    ――中に、男のモノが入ってるの……? 僕はこの男に(けが)されたの……?    灼熱がじわじわと、内側を侵してくる。  ひく、ひく、と奥で跳ねる異物に、脳が拒絶の悲鳴を上げた。  だけど、それは確かに、そこにある。    感触がはっきりと伝わった瞬間、アドニスの瞳から、音もなく涙が零れた。    喉がひゅっと鳴る。  心臓が小さく悲鳴を上げた。    ――うそ……嘘だよ……。そこはユリセス様に捧げたかったのに……。   「お願い……抜いて……」 「え? 挿れたばっかりじゃん」 「お願い……そこはユリセス様に……」    突然、男は思い切り、腰を叩きつけた。   「ユリセスユリセスうるせーな! お前はもう俺のものなんだよ!」 「はううっ!」    肉棒が大きすぎて先端が付いた瞬間、直腸ごと刺激を与えられる。  大きさと太さと熱が、アドニスの肉壁に染みわたる。    抽挿を繰り返されるたびに、男の肉棒が出入りしている場面が脳内で浮かび上がる。    自身よりも太くて、浮き出た血管に凶悪な槍のような熱い凶器。  それが、アドニスの秘肉を蹂躙(じゅうりん)していく。    まさに想像していたユリセスが、中にいる気がした。    ――ダメ! ユリセス様じゃないのに! なのにどうして……身体は、ずっと彼を待っていたみたいに、熱いの……?   「ああっ……い、いやだっ……!」  肌を打つ水音が、いやらしく教会の空気を濡らす。  (あらが)(すべ)はもうどこにもなく、快感が全身をじわじわと浸食してくる。 「ひっ……あ、そこ……っ、やっ……!」  先端が触れるだけで、体が跳ねる。  自分が動かしてるんじゃない――男に動かされている。 「やめて……っ! そんな……責めないで……!」  叫び声の隙間に、甘く蕩けた喘ぎが混ざる。  それに気づいた男の動きが、さらに鋭く、狡猾(こうかつ)に変化していく。 「ふふ……神官様、もう待てないんでしょ?」  ――ちがう……ちがう……! けれど、腰が……勝手に、後ろへ……。   「あっ! ああっ! あんっ!」    頭ではダメだとわかっているのに、もう快感が止まらない。  すでに男はアドニスが甘い声を出す場所をわかっていたようで、先端で執拗(しつよう)に擦りつけた。   「ひいっ……! あっ……そ、そこ……やめ……」 「神官様は感じやすいのかな? 耳も弱いし、挿れただけで簡単に堕ちちゃうし、最高」 「ああっ……やめて……やめてぇ……」 「やめるわけないじゃん? ちゃんと身体に覚えさせるよ」    快感が、憎いほど甘くて――もう、止められない。    ……やめて、やめたい、なのに。  身体の奥が、ずっと欲しがってる――。   「あっ……ああっ……そこ……つ、突いちゃ……」    身体が男の肉棒に馴染(なじ)んでいく。    その時だった。    抽挿のリズムが、ふっと止まった。  ――え……?  欲しいと願ったのは、自分じゃない。  なのに、脳裏に浮かんだのは――明確な言葉。 『……お願い、果てさせて……』  ……今のは、本当に誰かの声だった?    それとも――僕自身の、もう戻れない声……?

ともだちにシェアしよう!