24 / 66

第二章 穢した愛 11 ⭐

「そうだ。神官様、ゲームしようよ?」 「えっ……」 「俺が先にイッたら、神官様の大事な村、助けてあげる。いいゲームでしょ?」 「ふざけたことを!」 「ふざけてないよ? 村も守れるし、ユリセスにいいところ見せられるなら、ゲームに乗った方がいいと思うけどなぁ」    耳元に息を吹きかけられて、ビクビクと震える。  確かに男の言う通り、賭けに勝てば二度と村は襲われない。    あの日のユリセスの姿が、そっと脳裏に浮かぶ。   『アドニス様……セリシアの意味をお忘れですか?』    風に揺れる銀髪、柔らかな笑み。  彼の手には――愛を誓う花、セリシア。    あのときと同じように、差し出されている。  その花とともに、何か大切なものまで預けられた気がした。    ……村を、守って……そして――ユリセスに、会いたい。   「やる?」    アドニスは流されるまま、こくんと頷いた。    ユリセスの笑顔が、ゆっくりと墨を流したように塗り潰される。  アドニスの中で後戻りのできない扉が、静かに(きし)みを立てて開いた――。   「あー……言うの忘れてたけど、神官様が先にイッたら、どこかの家襲うからね」 「なっ……!」 「もう取り消せないよ? ……だって、今の神官様、こんなに期待で濡れてるんだもん」    男がくくっと不気味に笑った。    ――まさか、僕はとんでもない間違いを……! 「待っ……! あああっ!」 「待たないって」  がむしゃらに突き上げられ、腰が跳ねる。  ぐっぐっと奥を抉られるたび、脚がガクガクと震え出す。  ――まずい、そこは……。  耐えられない場所。  ひとたび触れられれば、勝手に身体が――。   「くふっ……んんっ……」    アドニスは唇を噛んで、我慢した。  ……けれど、先ほどまでの快楽の余韻が、指先や脚の奥にまで、じんわりと残っていた。   「さすが神官様。犯されても動じないなんて神への信仰が厚い証拠だよ」 「……んっ……ん……」 「あー、やばい。気持ち良くて俺の方が先に出ちゃいそう……」    男の切なそうな声にアドニスは好機だと言わんばかりに、わざと腰を揺らした。   「あれ? 神官様も気持ちいいの?」 「ふっ……うう……」    最奥に当たらないように気を付けながら必死に腰を振り続けるが、男はなかなか果てない。  早く、と心の中で叫んだ瞬間、臀部をがしっと掴まれた。   「神官様におねだりされたら……俺、もう我慢なんかできないよ……。中、ぐちゃぐちゃにしてあげる……」    男は思い切り先端を最奥に押し込んだ。  直腸が上にせりあがった感触がした瞬間、目の前が真っ白に弾けた。   「あああああーっ!」    涙よりも先に、悦びの汁気が迸る。    ――違う、違う……これは、神に背いた証じゃない。    神に仕えるはずのこの身体が、穢されて……悦んでいる。  ――僕は……村人を助けるために、犯されているだけ……。だから……気持ちよくなってるフリをして……そう、信じていれば……。  絶頂の余韻が引いても、身体の奥にはまだ、男の熱が抜けずに残っていた。

ともだちにシェアしよう!