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第三章 抗えない淫愛 9 ⭐

 ――まだ、欲しい……よぉ……。   「も……もっと……」 「もっと? 乳首いじりすぎて片方だけ伸びちゃったよ?」    想像して心臓が高鳴った。    ――僕の身体……変えられちゃう……。   「こっちだけずっと勃起させておこうかな」 「ああ……おお……」 「服着ても上からわかるぐらい大きくしてあげようかなぁ……。みんなから変な目で見られちゃうね……」    ――みんなに見られる……。    心臓がどくんどくんと高鳴る。  夜道、見知らぬ男に路地裏へ引きずり込まれて――。  片方だけピンと張った乳首を、まるで玩具のように何度も執拗に(いじ)られて……。  熱を注がれ続けて、最後にはそこしか感じなくなって――。 「ひゃうっ……!」    突然、乳首を引っ張られて、腰がびくびくと跳ねた。   「何考えてるの?」 「おっ……おおっ……」 「どうせセックスのことばっかりだろ? 変態」    男の言葉が耳にこびりついて、脳がぐしゃぐしゃに(とろ)けていくような感覚がした。   「ふふっ……痒みはひいた?」    アドニスは素直に首を横に振った。   「……じゃあ解毒剤をあげようかな」 「んんっ!」    男は欲棒をゆっくりと口内に侵入させた。    ――お、大きい……っ!    顎が外れそうなほどの大きさに、つい口を閉じそうになった――そのとき。 「歯を立てたら、村を襲うよ」  あどけなかった声が、ぞっとするほど低く冷たくなった。  その瞬間、アドニスの身体が凍りつく。  震えながらも、逃げられない。  苦しさに耐えながら、男を喉奥まで咥え込んだ。 「ああっ……神官様……気持ちいい……っ」  その声音に、アドニスの心臓が跳ね上がる。  一瞬、世界が揺れた。  まるでユリセスが、目の前で囁いたかのようだった。  ――僕が咥えているのは……ユリセス様の……?  思考が絡まるよりも早く、男の手が髪を掴み、腰が打ちつけられる。  激しく喉奥を抉られ、意識が快楽に引きずられた。 「うぐっ……ぐぅっ……ううっ……」 「ああ……気持ちいい……もっと吸って……」  声は似ていても、ユリセスとは違う。  けれど、それでも胸の高鳴りは収まらなかった。   「ううっ……ぐっ……」 「そう……上手いよ神官様……っ……」    気付けば、この肉棒を、ユリセスのものだと錯覚し始めていた。    張型を使って慰めるたび、アドニスは妄想していた――。    灼熱のように熱く、脈打つ血管、槍のような先端。  そして、口に収まらないほどの太さ。  今、その妄想が、口内で生々しく形を持った。  ――ああっ……ユリセス様……! ユリセス様も、こんなに……。  僕の口の中にあるのは、ユリセス様の――。  そう思った瞬間、舌が勝手に動いた。  触れた感触は、想像でしか知らないはずなのに……。  なぜか、確かに「それ」だった。   「あれ、急にしゃぶり方が上手くなったね……神官様はスケベだからすぐコツがつかめるんだぁ……」 「ふうっ……んんっ……」    頭ではユリセスじゃないとわかっているのに、しゃぶるのがやめられない。  舌で器用に先端を舐めると、裏筋に這わせて吸い上げる。  男の震えが口元まで伝わってきた。   「うっ……気持ちいい……気持ちいいよ神官様……っ」 「はぁっ……ユリセス様ぁ……」 「ユリセス……?」 「うっ……! うぐうっ……!」    突然、男が怒りをぶつけるように、アドニスの喉奥まで肉棒を突き込んできた。  ()せても、嗚咽も出ない。  先端が喉に押しつけられ、息が詰まる。  体勢はそのまま。  逃げられず、口の奥を支配される。  涙が一粒、こぼれ落ちた。   「ユリセスユリセスってよぉ……お前が咥えてるのは誰なんだよ?」 「うっ……ううっ……」 「俺だろ! 俺に奉仕しろよ! この淫乱が!」    苦しいはずなのに、胸が高鳴る。  ――この声まで、似ている。似すぎて、壊れそう……。   「ううっ……ぐっ……」 「二度とあの男の名前を呼ぶなよ?」    アドニスは必死に、頭を縦に振った。  このままでは、本当に窒息してしまう。  目の前が霞んで、何もかもがぼやける。  涙なのか、(よだれ)なのかもわからない。    でも、ひとつだけ――ユリセスの名前を呼んだことだけは、取り返しがつかない。   「ふふっ……これは俺だよ。俺をちゃんと覚えるんだよ……いいね?」    満足したのか、男の声は再び無機質に戻った。  もう一度、アドニスは首を縦に振った。  すると、ようやく男は身体を離した。   「くはぁっ……! ううっ……げほっ……ぐぅっ……」    酸欠で頭がぐらぐらする。  呼吸が整う間もなく、再び欲棒が口内に押し込まれた。

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