38 / 66
第三章 抗えない淫愛 9 ⭐
――まだ、欲しい……よぉ……。
「も……もっと……」
「もっと? 乳首いじりすぎて片方だけ伸びちゃったよ?」
想像して心臓が高鳴った。
――僕の身体……変えられちゃう……。
「こっちだけずっと勃起させておこうかな」
「ああ……おお……」
「服着ても上からわかるぐらい大きくしてあげようかなぁ……。みんなから変な目で見られちゃうね……」
――みんなに見られる……。
心臓がどくんどくんと高鳴る。
夜道、見知らぬ男に路地裏へ引きずり込まれて――。
片方だけピンと張った乳首を、まるで玩具のように何度も執拗に弄 られて……。
熱を注がれ続けて、最後にはそこしか感じなくなって――。
「ひゃうっ……!」
突然、乳首を引っ張られて、腰がびくびくと跳ねた。
「何考えてるの?」
「おっ……おおっ……」
「どうせセックスのことばっかりだろ? 変態」
男の言葉が耳にこびりついて、脳がぐしゃぐしゃに蕩 けていくような感覚がした。
「ふふっ……痒みはひいた?」
アドニスは素直に首を横に振った。
「……じゃあ解毒剤をあげようかな」
「んんっ!」
男は欲棒をゆっくりと口内に侵入させた。
――お、大きい……っ!
顎が外れそうなほどの大きさに、つい口を閉じそうになった――そのとき。
「歯を立てたら、村を襲うよ」
あどけなかった声が、ぞっとするほど低く冷たくなった。
その瞬間、アドニスの身体が凍りつく。
震えながらも、逃げられない。
苦しさに耐えながら、男を喉奥まで咥え込んだ。
「ああっ……神官様……気持ちいい……っ」
その声音に、アドニスの心臓が跳ね上がる。
一瞬、世界が揺れた。
まるでユリセスが、目の前で囁いたかのようだった。
――僕が咥えているのは……ユリセス様の……?
思考が絡まるよりも早く、男の手が髪を掴み、腰が打ちつけられる。
激しく喉奥を抉られ、意識が快楽に引きずられた。
「うぐっ……ぐぅっ……ううっ……」
「ああ……気持ちいい……もっと吸って……」
声は似ていても、ユリセスとは違う。
けれど、それでも胸の高鳴りは収まらなかった。
「ううっ……ぐっ……」
「そう……上手いよ神官様……っ……」
気付けば、この肉棒を、ユリセスのものだと錯覚し始めていた。
張型を使って慰めるたび、アドニスは妄想していた――。
灼熱のように熱く、脈打つ血管、槍のような先端。
そして、口に収まらないほどの太さ。
今、その妄想が、口内で生々しく形を持った。
――ああっ……ユリセス様……! ユリセス様も、こんなに……。
僕の口の中にあるのは、ユリセス様の――。
そう思った瞬間、舌が勝手に動いた。
触れた感触は、想像でしか知らないはずなのに……。
なぜか、確かに「それ」だった。
「あれ、急にしゃぶり方が上手くなったね……神官様はスケベだからすぐコツがつかめるんだぁ……」
「ふうっ……んんっ……」
頭ではユリセスじゃないとわかっているのに、しゃぶるのがやめられない。
舌で器用に先端を舐めると、裏筋に這わせて吸い上げる。
男の震えが口元まで伝わってきた。
「うっ……気持ちいい……気持ちいいよ神官様……っ」
「はぁっ……ユリセス様ぁ……」
「ユリセス……?」
「うっ……! うぐうっ……!」
突然、男が怒りをぶつけるように、アドニスの喉奥まで肉棒を突き込んできた。
咽 せても、嗚咽も出ない。
先端が喉に押しつけられ、息が詰まる。
体勢はそのまま。
逃げられず、口の奥を支配される。
涙が一粒、こぼれ落ちた。
「ユリセスユリセスってよぉ……お前が咥えてるのは誰なんだよ?」
「うっ……ううっ……」
「俺だろ! 俺に奉仕しろよ! この淫乱が!」
苦しいはずなのに、胸が高鳴る。
――この声まで、似ている。似すぎて、壊れそう……。
「ううっ……ぐっ……」
「二度とあの男の名前を呼ぶなよ?」
アドニスは必死に、頭を縦に振った。
このままでは、本当に窒息してしまう。
目の前が霞んで、何もかもがぼやける。
涙なのか、涎 なのかもわからない。
でも、ひとつだけ――ユリセスの名前を呼んだことだけは、取り返しがつかない。
「ふふっ……これは俺だよ。俺をちゃんと覚えるんだよ……いいね?」
満足したのか、男の声は再び無機質に戻った。
もう一度、アドニスは首を縦に振った。
すると、ようやく男は身体を離した。
「くはぁっ……! ううっ……げほっ……ぐぅっ……」
酸欠で頭がぐらぐらする。
呼吸が整う間もなく、再び欲棒が口内に押し込まれた。
ともだちにシェアしよう!