44 / 66

第四章 狂愛に、堕ちて 2-1 ⭐

 夜がやってきた。  懺悔するものが現れるたびに、胸が高鳴り、身体の中心が疼いた。  懺悔の言葉など、全く耳に入らなかった。    必死に言葉を紡ぎ、嗚咽を漏らしながら、罪を独白する。  目の前にいる神官が、張型を咥え込みながら聞いている――。    その状況に、背筋がゾクっとした。    誰かに気づかれたらという恐怖が快感を増幅していく。  適当に相槌を打ち、心に寄り添うような言葉を使い、免罪符を渡す。  ただそれだけで、懺悔する者は涙を流して去っていく。  ――いつ、気づいてくれるの……?  興奮が増してきた頃、教会はしんと静まり返った。  もう深夜になって、誰もいなくなったのだ。  アドニスがそっと服をたくし上げると、破裂しそうなくらい膨張した自身が月明かりに照らされた。  誰もいない。  もう人も来ない。  我慢できずに、自身を握った。 「んふぅっ……」  誰も……誰も気づかない。  張りつめて疼くこの屹立に――誰も手を伸ばしてはくれなかった。    気づかれたとしても、言い訳すればいい。    この張型を埋めないと、村人を殺すと脅迫されていると――。    だから、こうして自身を慰めても、誰も罰しない。  むしろ、村人も納得してアドニスを慰めてくれるかもしれない。  たくさんの欲望を握りしめて。 「んひっ……あうぅ……」  ――奥が……奥が疼くぅ……。  張型に手を伸ばし、最奥を擦り上げる。 「んっ……あっ……」  ――違う……。全然違う……!  アドニスは股を大きく広げて、張型が奥まで届くように体勢を変えた。    張型の大きさでも奥に届いている。  でも、快感が全然違う。    目の前がパンと弾けるような衝撃。  腰が蕩けそうなほどの甘い刺激。    勢いよく抽挿を繰り返しても、一つも身体に伝わらない。 「やだっ……ああっ……」  ぐしゅっぐちゅと、卑猥な水音が響くだけで、ただ疼きが増すだけだった。 「い……イキたい……イキたいぃ……」 「手伝おうか?」  身体がビクッと震えた。  懺悔室の小窓から、ギラリと光る獣の目が見えた。    ――来た……。      身体の奥がドクドクと疼き出す。   「俺が来るまで待てなかったの?」 「か、帰って!」    帰ってほしいのに、胸の奥で何かがうずいていた。    もう弄ばれたくない……。    ……これ以上されたら、身体は戻れないから――。 「帰っていいの? すごくつらそうだけど」 「帰って! 帰ってよ!」  一瞬沈黙すると、男はふっとため息をついた。 「ちょっと用事が入っちゃってね。明日この村を出なきゃいけないんだ」  心臓がドクンと跳ねた。 「だからさ、最後に俺の懺悔を聞いてくれない?」    囁くような声だった。  でも、それは冗談でも、気まぐれでもなかった。

ともだちにシェアしよう!