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第七章 愛という名の赦し 11-2 ⭐
「ふふ……アドニスはかわいいなぁ……」
ユリセスは、ぐいっとリードを引いた。
革が首に食い込み、ピリッとした痛みが走る。
見上げた先には、冷たい瞳のご主人様――ユリセスがいた。
その視線すら、痛みすらも。
すべてが興奮をかき立て、心の底から思った。
――ああ……これ以上ないほど、幸せだ……。
もう一度、欲棒を咥えようとした瞬間――。
「待て」
低く冷酷な声。
初めての命令に背筋がゾクゾクした。
目が合った瞬間、冷ややかな視線に息を飲んだが――
その奥に滲む温かさに、心が震えた。
それだけでもう果てそうだった。
自分の頬にユリセスの膨張した熱が当たっている。
芳 しい卑猥 な匂いが漂っている。
――早く、早く欲しい。
「んんっ……んああ……」
舌を出すと、リードをぐっと引っ張られた。
「俺の言うことが聞けないの?」
「あうぅ……ご奉仕……ご奉仕させてくださいぃ……」
「まだだって、犬になった途端わがままになるんだなぁ……」
……嬉しくて、止められなかった。
気づけば、欲棒に頬をすり寄せていた。
叱られてるはずなのに――優しく褒められた気がした。
「ご……ごめんなさい……舐めたいです……ご主人様のチンポ……舐めたいです……」
「ダメ」
「ええうぅ……」
我慢できずに舌を出すと、ユリセスが指を入れた。
目を瞑り、怒張を握りしめ、まるでそれであるかのように指をしゃぶった。
根元まで深く吸い込み、頭を上下に動かす。
指先を舌でちろちろと舐めると、また口いっぱいに頬張る。
何度も何度もしゃぶって、ユリセスの指はアドニスの唾液でぬらぬらと光っていた。
「うわ……やらしい……そんなに舐めたいの?」
「……舐めたいです……ご主人様のチンポ……欲しいです……」
ユリセスの指先を舌で舐めた瞬間――。
「よし」
ようやく、赦しの言葉をもらった。
頭が真っ白になって、吸い込まれるように欲棒にしゃぶりつく。
「んふっ……んっ! んんぁ……っ……」
口内に広がる熱と、淫靡な香りと甘い苦み。
しゃぶればしゃぶるほど、くらくらして脳がとろける。
「んっ……はぁっ……ご主人様ぁ……」
「なに?」
「触りたい……触りたいです……」
「ふふ……ダメ」
自身を握ろうとして、ユリセスに足で小突 かれた。
アドニスの小さくて可愛らしい屹立は先端からたくさんの蜜を出して、ピクピクと震えていた。
「んあっ……お願いします……ご主人様ぁ……」
「ふふっ……どうしようかなぁ……」
アドニスは懇願するように、ユリセスの顔を見ながら、しゃぶった。
根元まで咥え込み、舌で強く撫で上げる。
ご主人様への忠誠を、喉の奥から――必死に捧げるように。
「ご……ご主人様ぁ……あむっ……お……大きくて……太くてぇ……こ、これがないと……僕……生きて……いけません……」
「それで?」
「ああっ……ご主人様……好きです……」
ユリセスは高らかに笑った。
「はははっ……チンポが好きなの? 俺が好きなの?」
「しゅきっ……好きです……ご主人様も……んむっ……はぁっ……チンポもしゅきぃ……」
ユリセスのくぐもった笑い声と共に、ジュブジュブと卑猥な音が響く。
ゆっくりと確実に、ユリセスの怒張が膨張していくのがわかった。
――来る……来る……。
ユリセスの赦しという名の白濁液が欲しい。
口から胃へと身体に取り込んで、血液も何もかも、ユリセスのものになりたかった。
「口に出して欲しいの?」
「はぁっ……うむぅっ……あえっ……」
「聞こえてない……か……」
ユリセスもアドニスに合わせて、激しく腰を揺らした。
喉奥にユリセスの先端が当たる度に、至福の嗚咽が迫り上がる。
――出る。出る!
ユリセスがくぐもった声を出した瞬間、口内が熱を帯びた。
どろどろとした粘っこいものが、歯列にまとわりつき、鼻奥に青臭い猥雑 な匂いが充満する。
アドニスは敢えて飲まずにいた。
舌が痺れるほどの、ユリセスの愛の苦みを感じ続けた。
そして、わざとユリセスに見せつけるように口を開けた――主人の愛を受け取ったとわかってもらうために。
「かわいい……アドニス。飲んでいいよ」
赦された瞬間、音を立てて飲み干した。
じわじわと、ねとっとした感触が、ゆっくりと喉元を過ぎていく。
「いい子だね……でも、俺の言うことが聞けなかったね」
「あう……ああ……」
アドニスはもう、何も隠さなかった。
股を開き、震える蕾を晒して――ただ、ユリセスにすべてを見てほしかった。
手の中は、どろどろに濡れていた。
ユリセスに禁じられていたのに――勝手に触って、出してしまった。
その中に溶けているのは、ユリセスの命令を破った――アドニスの欲望だった。
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