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3.CEO
「君、なんか変わってるね」
クスクス笑う、楽しそうな笑顔。やっぱり、αにしては、やわらかく見えるな。イケメンなβなのかな?
「ここで働こうとしてるってことは、Ωなんだよね?」
「――β……」
言ってはみるけど、なんか、この人もう、確信して話してる気がする。
ていうか。働こうとしてるってことにも、すっかりなっている。
オレの、そろばん教室と病院の言い訳は完全スルーか。まあそりゃそうか。何でそろばん教室、潰れてんだよもう。
……っで、なんだっけ。
「Ωっぽくないよね」
「β……」
「もういいから、それ」
クスクス笑って、その美しい瞳を和らげる。
――外見にまったく興味のないオレでも、見惚れたりすること、あるんだな。
初めてかも。やっぱ、これはαか。βだったらびっくりだ。
Ωっぽくない、か。まあそうだよね、αの父に、βって嘘ついてバレてないくらいだし。ちなみにだけど、オレはヒートもたまにしかこない。超不定期。一度来ると、三日間くらいはつらいけど、まあ家に居れば、なんとか。薬も高いから飲まず、精神の力と、自分の手で慰めて乗り切る。三日くらいだから、学校とかも「風邪」で乗り切ってきた。全然誰にも気づかれない。
なので、ヒートでもないのに、αのフェロモンを感じられる体でもないので、この人のフェロモンがあるかどうかも、よく分からない。
んー、と見つめていると、イケメンは、勘違いしたみたいで、苦笑を浮かべた。それすら、なんか、綺麗。
「オレ、怪しい者じゃないから」
イケメンはスマホを取り出して、ネットで検索して、ある大きなグループ会社のホームページをオレに見せた。すると、目の前のイケメンがスーツを着て掲載されていて、肩書きは、このグループのCEOとなっている。
「……え、CEO? 社長ってことですか?」
「社長っていうと日本企業のトップかな。うち、かなりグローバルな会社で、じいちゃんがもうすごい人でさ。CEOのがカッコいいって」
まあ……カッコいいって理由だけじゃないと思うけど。
なんだこの人。しゃべり方、ほんと、軽いなぁ。CEOって、すごい偉い人なんじゃないの。このグループ、オレでも知ってるし。
……ていうか、この人は、オレの、Ωの店への入店を、邪魔して、何を言いたいんだ。
「CEOって……すごく、若くないですか……?」
「うん、そうだね。こないだ、じいちゃんから引き継いでさ」
「……お父さんは居ないんですか?」
「居るけど?」
「……えーと……お父さんは、すっ飛ばしたんですか?」
「聞き方……」
クスクス笑いながら、イケメンCEOは頷く。
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