7 / 139
◇
――ほんと、なんだろう? と、その口が開くのを待っていると。
「今聞いたの、オレの言うこと、聞いてくれたら、解消できるかも」
「――?」
どういうこと?
なんかちょっと、話を聞きたいと思った。
「君のこともう少し聞いてもいい?」
「……答えられることなら」
「OK、それでいいよ。恋人はいる? いつか番になりたい人とか」
「いません……ていうか、むしろ、オレは、番にはなりたくありません」
「そうなの?」
「ヒートもそんなひどくないし、たまにくる三日間をひきこもって耐えれば、それ以外の時は大丈夫ですし」
「抑制剤は?」
「高いのでもったいないですし、三日間くらいなので耐えられる程度です」
「――そんなにそのお金、使いたくないの?」
「そうですね。ほんとは、学費も、出されたくないんですけど……医学部高くて、これは絶対無理なので」
オレがそう言うと、北條さんは瞳を細めて、オレを見つめた。
「ご飯とかはちゃんと食べてる?」
「まあ死なない程度には」
「――……」
北條さんはさっきからずっと苦笑な気がする。
でも、それも、なんか嫌な感じじゃなくて、優しい感じに見えるので、ふ、とオレまで笑ってしまう。なんか不思議な、人だなぁ……。なんか惹きつけられる。人として? なんだろうね、これ。
カリスマ性とか――こういう感じを言うなら。
αの押し付けてくる威圧的なそれじゃないなら、結構好きかもしれない。
「人助けにもなる気がしてきた。オレと君、きっと良いパートナーになる気がするんだよね。話、詳しく聞いてみない?」
すごく至近距離で、じっと見つめられる。
陽の加減なのか、綺麗な紫に見える瞳。
うわ。なにこの瞳。初めて見た。
自然界にはほとんど居ないはずの瞳の色。これは――。
「北條さんて、α、ですか?」
「オレ、αだよ。極上って言われてる、トリプルエスランク」
「――」
やっぱり。
強烈な人に出会ってしまったのかも。瞳だけでもう、高貴すぎて、ヤバい。
ともだちにシェアしよう!

