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106.プレゼント

 水族館のことや、学校の話、いろんな話をしていたら、あっという間に目的地に到着。瑛士さんと話してると本当に楽しくて、時間があっという間だなぁと思いながら、シートベルトを外した。  瑛士さんはエンジンを切ってから腕時計を見て、「良かった」と微笑んだ。 「まだ時間、余裕だった。凛太も行こ?」  車から降りて、お店の前に立つ。見た目はすごく高級そうな宝石店だった。 「ここなんですか?」 「うん。Ω用のチョーカーも中で受注してくれる」 「……なんだか場違いじゃないですか? オレ、車で待ってますけど」 「何で? 服装なら一緒でしょ。今日は」  確かに。水族館のTシャツでお揃いだけど……。  ……ていうか。こんな服で入っていいお店じゃない気が……。  瑛士さんはそもそも服以外の部分がスペシャルな感じだから、大丈夫な気がするけど……て言っても、分かってくれなそうな顔で、ニコニコしながら、オレの背に触れる。 「凛太にあげるチョーカーなんだからさ。せっかく一緒に居るんだから、一緒に受け取ろ?」  そんな笑顔で、そんな風に言われると、とてもじゃないけど、断れない。  分かりました、と言いながら、めちゃくちゃ高級感あふれるお店に近づく。  お店の中は、一言でいうなら……全部高そう。内装全てが綺麗でキラキラしてて、でもうるさくはない。凛とした静かなイメージ。自然と、背筋が伸びる。瑛士さんは、オレの背中をぽんぽんして、緊張しないで、とクスクス笑う。  どうしたって緊張しながら、瑛士さんとお店の人とのやりとりを見守っていると、とても品の良い男の店員さんが出てきて、店の奥へと案内される。 「今日は水族館に行ってたんです。遅くなってすみません。びしょぬれになって水族館で買ったTシャツになってるんですけどね」 「どうりで。ペンギンのTシャツは珍しいなと思いました」 「まあ普段は着ないですけど……意外と似合うでしょ?」 「ええ」  よく知ってる人なんだろうか。気安い口調で瑛士さんは笑いながら話していて、相手の人も、楽しそうに聞いている。そしてそのまま個室に通された。広い部屋の真ん中に置いてある高そうなソファに座った。  ……普通はお店で受け取るよね。こんな個室に案内されるのとか、オレ一人だったら一生無いだろうなぁ。  瑛士さんと居ると、この世にはこんなところがあるんだなぁって、何回も思う気がする……。  目の前のテーブルの上に置かれたのは、とても綺麗な箱。その中に柔らかそうな布に包まれたチョーカーが入っていた。メタルの素材のシンプルなものに見える。  瑛士さんが、差し出された布の中から、チョーカーを手に取って、オレに視線を向けた。 「凛太、つけてみてもいい?」  チョーカーなんて、初めて。ちょっとドキドキしながら頷く。  少しひんやりとした感触が首に触れて、かち、とはめられる。お店の人が、鏡をそっと差し出してくれる。 「どう? 違和感ある?」 「いえ。軽いですし。全然……」  普通のアクセサリーにも見えなくもない。  これなら、そんなに目立たずに、つけていられるかも。そっと手で触れると少し冷たく感じた。 「これ色んな機能がついてるんだよ――説明書、ありますよね?」 「はい。こちらに詳しく書いてますので、後ほどゆっくりごらんください」  なんだか結構分厚いなと思いながら、頷くと、瑛士さんがにっこり笑う。 「登録した指紋で解除できるし、スマホアプリでロックできるよ。第三者には勝手にはずせない。パスワードを入れ間違えたり、ヒートとかで体温や心拍が異常値になると自動でパートナーのスマホに連絡が来るようにも設定出来るから、何かあった時も少しは安心でしょ」 「そんなこと出来るんですか」 「できるんだよね。最近、急に進化してきてるところだよ」  ――こういうの、皆がつけられたら。事件とか事故も、減るのかなぁ。  ふと思ったけどここでは言わない。だってなんか、きっとめちゃくちゃ高そう。  いつか、こういうのも……もっと安く作れたらいいな。  冷たい感触に触れながら、そんな風に考えていると、瑛士さんが微笑んでる。 「凛太の肌の色に似合うね。良い感じ」  なんて、普通の顔で言うから。……今は特に、お店の人も居るし。  お店の人、似合うとか思ってるかなぁ。うーん……。  それじゃなくても。  なんか、ほんと、そんな風ににこにこ褒められると、照れるんだけど。と、ちょっと俯いた。

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