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113.いつもとちがう※
「……ん……ん、ぅ……っぁ」
瑛士さんのキスや愛撫の合間に、はぁ、と荒い息が零れる。熱い。くらくらする。
ヒートの時は基本いつも同じだ。よく分からずに上がる熱と息に頭の中くらくらして、ただ、触りたい欲のまま自分を慰める。
何でこんなこと、定期的にしなきゃいけないんだろうってすごく思って、快感もあるけど、苛立ちや、どうしてっていう強い気持ちがあって。
絶対、ちゃんと効く抑制剤とか、作ってやる、と。
朦朧としてる時は考えられないけど、途中、意識がある時はいつも、それだけを、考えて過ごす。
でも。
「……凛太」
そっと頬に触れてくれる瑛士さんの手と、名を呼ぶ声に、ほっとする。
今日は、いつもと違う。
――何回達したか、分かんないけど。
いつもの、達した時の虚しいような、よく分からない気持ちが、今日は、無い。瑛士さんがしてくれることは、なんだかほんとに、全部気持ち良くて、優しくて、もうなんか……。
……この感覚は、幸せ、なのかも。
こんな風に、思わせてくれるとか……本当に、瑛士さんて、すごい。
「凛太……少し楽になった?」
背中に触れた手に抱き寄せられて、そんな風に聞かれる。うんうん、と頷くと、瑛士さんは、良かった、と笑う。
「少し、何か食べるか飲むかしようね」
頭を撫でてくれながら、瑛士さんがオレの頬にキスしてくる。
それすら、くすぐったくて、ぴく、と震えるオレに、瑛士さんは微笑む。
「ちょっとだけ待っててね」
オレを少し離させて、瑛士さんが居なくなろうとしてるのが分かった。
思わず、瑛士さんの腕を、両手で押さえてしまった。
「ん?」
振り返った瑛士さんは、不思議そうにオレを見つめる。
「もうすこし、続けたい?」
優しく瞳を細めて、聞いてくれるけど。オレは、首を横に振った。
「ちがくて……」
「違うの? どうした?」
ふ、と微笑む瑛士さんに、オレは、何秒か、言葉に詰まる。
オレに触ってくれてる間、何度か、体勢によっては触れたり……見えたり。
――瑛士さんのも、反応してることに気づいていた。
αの瑛士さんが、その気になっちゃうってことは。
オレ的にはたぶんあまり良くないことな筈なんだけれど……。
瑛士さんも、そういう気持ちになってくれるんだ、と、むしろちょっと嬉しいくらいだったりする。でも、瑛士さんは自分は全然気持ちいいこととか何もしないで、オレばっかり、可愛がってくれてて……どうしたらいいのか、さっきから、考えていた。
「……あの、瑛士さん」
「ん?」
「もし……やじゃなかったら」
「うん」
かなり躊躇う。
うまくできる気なんて、全然しない。
でも。
……瑛士さんが、さっきからずっと、オレにしてくれてたことは、オレも、なんとなく、分かったような気が……。
「……瑛士さんのに……触っても……いいです……??」
「――――……」
ふんわり笑って、オレの言葉を待ってくれていた瑛士さんが、瞬間、真顔になった。
あ、嫌かな……? と内心青ざめる。
そ、そうだよね、オレがやってもへたくそなのは分かり切ってるよね。
……わー、オレってば、何を聞いてるんだ、もう、馬鹿!!
そう思った瞬間。瑛士さんが、ちょっと眉を顰めて、言うことに。
「……凛太が触りたい、と思うなら、かな……」
「え」
「オレがしたからって、凛太が無理して、とかは嫌なんだけど」
「む。無理じゃない、です」
小刻みに首を振っていると、瑛士さんが笑いながら、オレの両頬を、はさんだ。
「振りすぎ。……凛太、かわい」
ちゅ、とキスされる。
かぁぁ、と顔が熱くなる。何でこの人は、こんなに甘々なんだろう。
……今までも、こんな風に誰かを甘々に可愛がってきたんだろうなぁと思うと。
………………思うと……?
なんだかすごく、胸の奥がモヤモヤする。
「凛太、手、貸して?」
瑛士さんの声に誘われるまま、右手を瑛士さんの手に触れさせると。
そっと、瑛士さんのに触れさせられる。服の上から、だけど。
……すごい、かたい。のと……なんか、めちゃくちゃおっきいな。
大人のそれ、って気がする……。
いや、でも……オレが大人になっても、こうはならない気がするけど。
複雑な気持ちで首を傾げると、瑛士さんが、ふ、と笑った。
「無理ならいいよ。ごめんね、ちょっと落ち着かせてくるから。シャワー浴びてくる」
「無理とかじゃ、なくて……」
「ん?」
「……いや。あの。……おっきい、なと」
言った瞬間、瑛士さんがびっくりした顔をして――。
触れてたそれが、さらに、硬さを増した気が。
わわ……。びっくりしてると、瑛士さんが、じっとオレを見つめて、苦笑する。
「それって、純粋な感想、だよね……?」
「……? はい……。てか、純粋じゃなかったら、なんですか……?」
「煽ろうとしてんのかと……」
「煽る……?」
……煽ることになるのか。
……んん。よく分かんないけど……。
手の中でおっきくなるそれに、わーわー、と心の中で焦ってると。
「そんなわけ、ないか……」
ふは、と瑛士さんが。こんな時なのに、楽しそうに笑い出した。
その内、笑いを収めて――。
なんだかすごく、色っぽくて艶っぽい雰囲気で、オレを見つめてきて。
「触りたいなら。好きに触っていいよ」
ぼぼ、と顔に火が付いたみたいで。
「……じゃあ……」
遠慮なく……? ていうのも変だけど。
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