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157.明るく?
翌日。早めに登校してゼミ室に行くと、内海教授と佐川教授と竜がいた。
「おはようございます」
挨拶をしながら入り、テーブルに鞄を置くと、皆がオレの顔を見てくる。ん? と思うと同時に、竜が「なんかした?」と言ってくる。
「何かって何が?」
首を傾げてしまうと、竜がオレを見つめたまま言うことに。
「なんか全然、違うから」
「違う……あ、おお、すごい、竜。分かるの?」
「やっぱりなんかしたのか?」
会話を続けていると、教授たちの視線にも気づく。
「え、もしかして、分かりますか?」
思わず頬に触れてしまうと、教授たちも頷く。
「あの……昨日、エステに人生で初めて連れていってもらったんです」
「へー。そんなに変わるんだな」
「えー。って、どう変わったと思う??」
なんだか嬉しくなってわくわくしつつ聞いてしまうと。
「すげーすっきりしてる」
「そうだねえ。ハラスメントを恐れず一言でいうなら――可愛くなった、かな」
竜が言った後、佐川教授がくすくす笑って言った。
そっかー。一日経っても、分かるんだ~。麻里さん、すご……。
「たぶん、あれだな。よどんでいたリンパとかが綺麗に流れたんだろうな。首より上、全体的にやったのか?」
内海教授まで会話に入ってくる。
「……もしかして教授たちってエステで何するか知ってるんですか?」
なんか竜はともかく、二人は縁がないと思ってたけど。特に内海教授……。
「若い頃、連れていかれたりしたからな」
「えっそうなんですか?」
内海教授の発言にびっくり。すると、教授は嫌そうに続けた。
「学会の発表があるのに汚すぎるから行ってこい、て感じだな、オレは」
……やっぱり、内海教授のはなんか違う気がして、はは、と笑ってしまう。佐川教授はたまには行くらしく、とにかくさすが、上流のαさんたちはすごいなと感心してしまう。
「竜もいったことあるの?」
「脱毛とかのついでにいろいろ」
「へえええ……すご」
「お前は脱毛必要なさそうだもんなー。全体的に薄いし」
「薄いって……か、髪はあるからね」
「だれが髪の話してんだよ」
はっ、と笑われて黙っていると、佐川教授が、くすくす笑った。
「婚約指輪も、してるんだね。――エステだけじゃないかも。凛太くん、ちょっと、顔が明るくなったんたじゃないかな」
「――え。……そう、ですか?」
明るく……?
そんなに、すごい変わってる気はしないし。こうやって話すのとかも、全然普通に、今までもしてきたような気もするんだけど。
「Ωだって公表もして、隠し事もなくなったしな。そういのって地味に影響あるからな」
「ですねぇ」
内海教授の言葉に、佐川教授も頷いている。
「まあ、凛太くんにとっては、いまのところ、婚約はいいこと多そうだね」
思い切りは頷けなかったけれど、なんとなく微妙に、でも一応はちゃんと、頷いて――少し、笑みがこぼれる。瑛士さんのことが浮かんで、そこからふと思い出して、鞄から一昨日もらった招待状を三人に手渡した。
「婚約パーティーじゃないですけど……よろしくお願いします」
「ああサンキュ」
「ありがと、凛太くん」
竜と佐川教授に続いて、内海教授は笑って言う。
「なんなら、婚約パーティーより楽しみだなオレは」
「そういうこと言わないでください、教授」
佐川教授が諫めてるけど、まあ、気持ちはわかる。
「よくよく調べるとほんとに大きな医療系のグループみたいですもんね。呼ばれてる人達もすごそうですし」
「他人事みたいに言ってるが、そこのグループのCEOと婚約発表するんだろ」
内海教授が苦笑しながらそんな風に言う。
「……そう、ですよね」
確かに。
契約と思ってたから大したことじゃないと思ってたけど。
やっぱり、すごい世界に飛び込んじゃう感じするよね。
――指輪がやけに重く感じる
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