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158.いろんな覚悟

「実際、何のパーティーなんだ?」  内海教授に言われて、ええと、と記憶をたぐる。 「えーと……もともと瑛士さんのおじいさんが大きくした地域最大の病院があって……それをベースに、お父さんが薬局とか医療モールで広げていったらしくて」  教授たちも竜も軽く頷きながら聞いてくれているので、思い出しながら続ける。 「それで、今は持株会社でまとまってて、瑛士さんがグループのトップにいるんですって。グループのことは、今もおじいさんが相談役で一緒に見てるそうで」 「不動産とか、介護とかリハビリ施設もやってるよな?」 「あ、はい。なんか、いろいろやってるって言ってました。オレは、まだ全部はよく分かんないんですけど」 「まあ大体は分かった。――あの年でそのトップに据えられたのは、すげえな。オレなら、吐きそう」  内海教授が、うえ、と舌を出して肩を竦めさせる。 「それで、その元になった病院の創立記念パーティみたいです」 「ああ……じゃあそのパーティーは、医師会とか医療機器メーカー、製薬会社もだろうし……あとは金融とか不動産関係とか、諸々顔を出すんだろうな……すごそうだな」  そう言った内海教授に、佐川教授も頷きながら苦笑した。 「医療関係者や製薬メーカーは、顔見知りも多そうですね」 「だな。――めんどくせえが、まあいろんな意味で楽しそうだな」 「もめないでくださいよね」 「もめる気はないぞ。凛太の婚約発表の場でもあるし。――まあ、オレはな?」  ニヤ、と笑った内海教授に、佐川教授は眉を寄せて首を横に振った。 「どっちが仕掛けたとか関係なく、もめないでくださいよ?」 「分かってるって。――まあ、いろいろ様子見だな。凛太も、薬を作りたいって言ってるし、ちょっとは良さそうな奴がいたら、紹介してやるよ」 「あ、はい。お願いします」  わーそれは嬉しいかも。ちょっと楽しみ。  そう思っていると、佐川教授がまた苦笑しながらオレを見つめた。 「凛太くんは、ただでさえ、そんな巨大グループの婚約者として紹介されちゃうんだから――今回は、目立たず彼の後ろにいるといいよ。そういうパーティーはさ、いろいろ欲望も渦巻いていると思った方がいいし」 「欲望……」 「そ。まだまだピュアな君たちにはわからない、こわーい世界かもしれないよ」  そう言うと、竜は、「オレはなんとなくは知ってます」と肩をすくめる。 「ああ、そうか。竜くんの家が似たような感じだもんね」 「規模が違いますけどね」 「いやいや、そういう諸々は一緒だから。ま、気を付けようね。あんまり凛太くんは一人にならないようにね」 「――はい」  正直結構怖いから、進んで一人になる訳もない。  この三人がいてくれるから、誰かと一緒にずっといようと改めて決めた。  そこまで話した時、他のゼミの人たちもまとまって入ってきて、一気に騒がしくなった。 「この話はまたね」  佐川教授に言われて頷くと、オレは席に腰かけた。  ――大きなグループ会社の創立パーティ……。  出席する人達も、上の方の人たちが多いんだろうなぁ。  そのトップにいる、瑛士さん。  就任の挨拶って言ってたから――大変なんだろうな。  いくら瑛士さんがすごい人だったとしても、並みいる年配のすごい人たちの上に、二十七歳の瑛士さんが立つって。  そういうプレッシャー、ほんと大変そう。  そういうプレッシャーとか全然感じなさそうな内海教授でさえ、吐きそうなんて言ったことで、なんだか余計に実感した。  その時、スマホが震えて、メールを受信した。  瑛士さんがくれた予定の候補を、朝、父に送っていたのだけど……その返事が来てしまった。  空いてると言ってきたのは――三日後だった。  ああ。なんかいよいよ、日付が決まってしまう。  ――うう。やだなあ。  素直に思うのは、やっぱり、それ。

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