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164.自由と不自由

「瑛士さん、遅くなりそうなんですよね? 電話、待ってていいですか?」 「うん。とりあえず、凛太が終わったら、連絡入れといて。オレが終わったら、電話する」 「分かりました」 「疲れたら寝ちゃっててもいいよ。無理しなくていいからね。とりあえず、凛太が部屋に一人で入れたって分かれば安心だし」 「分かりました」  そう返事をしながら、そんな風に心配してくれるのが嬉しくて、口元がほころぶ。 「でも声は聴きたいから、起きれいられるなら、起きてて。ああ、音は消しといて。振動で気づくなら、出てくれたらいい」 「分かりました」 「じゃあまたあとでね」  電話を切って、ふ、と息をつく。  ライトアップされた葉が、風にそよそよ揺れていて、綺麗。    ここに一緒にいてほしいなぁって。オレも思う。  ――瑛士さんと会うまでのオレは、とにかく、自由だった。    何をするにも一人で決めてた。  竜に相談するようなこと、ありはしたけど、でも基本的な行動は、全て自由。注意されるようなこともないし、心配もされないし、自分で考えて、自分で動く。責任も自分でとる。  ご飯とか寝る時間とかも割と適当で、食べないで過ごしちゃうこともあったし、寝不足も結構あった。  楽だったし、身軽だった。  ほんとうに、自由だったと思う。  ――でも、瑛士さんと会ってから。  毎日、今日はどうする、みたいな話をする。  前みたいに、寝食関係なく勉強したり、そういう自由は、少しなくなった。瑛士さんに合わせて早く帰ったり、今までだったら、しなかったことを、時間をかけてやってたりする。  ――日々、いろんなこと、心配してもらって。  なんだか不思議なくらい、大事にしてもらって、すごく調子は狂うけど。  ……なんだろうなぁ。  この気持ち。なんて言うんだろう。  自由は無くなったのに。……んー。  ぱっと良い言葉が出てこなくて、いったん諦めて、コーヒーを飲もうと立ち上がった。  紙コップを一つ置いて、ポットで注ぐ。  会場の中の人が増えてきた。飲んだら戻ろうかなと思いながら、ミルクを淹れてかき混ぜた時。 「こんばんは」  隣に立った人が、声をかけてきた。咄嗟に顔を見る。  あまり知ってる人はいないから、きっと知らない人だとは思ったけれど、意外な見た目に内心驚いた。  マニアックな集まりだし、そういう感じの人たちとか、教授たちとつながりを持ちたい製薬会社の人たちとかが来てるのだろうという偏見ぽい決めつけをしてたので――めちゃくちゃ若くて、綺麗な男の人で、びっくり。  ……と言っても、それにびっくりしてること自体失礼だし、決めつけてたなぁと反省しつつ、こんばんは、と明るく返した。にこ、と微笑む彼は――もしかしたら同じくらいかなぁ? てことは、オレみたいに教授にくっついてきた学生さんとかかな? 「君も、Ω?」 「――Ωに見えますか?」 「うん。まあ。チョーカーしてるから。それ、アクセサー?」  くす、と笑われて、あ、そっか、と頷く。  まだ、Ωとして見られることに、全然慣れてない。  その人は、ふふ、と笑ってオレを見つめた。  オレより背は少し高い。  白シャツにジャケットを羽織ってる。綺麗だけど、派手ではなくて、て研究者っぽい上品な感じだ。  目は大き目、まつげも長いし、細い銀のフレームの眼鏡がすごく似合う。涼し気で――前髪は少し長めで、髪の毛はサラサラしてる。うん、綺麗。  コーヒーを注ぎ終えた彼は一口飲んでから、オレに視線を向けた。 「大学生?」 「あ、はい。三年生です」 「そっか。いいね、大学生」  ――てことは、大学生ではないのか。 「オレは製薬会社の研究員についてきてるんだけどね」 「そうなんですね」  研究員についてきてる。……研究員でもないってことかな。  じゃあなんなんだろ、とちらっと掠めて考えてると、教授たちが近づいてきた。 「凛太、そろそろ中に入ろう」 「あ、はい。コーヒー飲みますか?」  頷く二人にコーヒーを注いでいると、今話していた綺麗な人が、誰かに呼ばれて返事をしていた。  三十代……もうちょっと上かな。スーツばっちりのおじさん達。製薬会社の人たち? うち一人は、自信家……というか偉そう。絶対αだな、とこれまた偏見入りまくりの印象を受けたけど、そのまま、コーヒーに視線を戻す。  教授たちは顔見知りらしく、軽く挨拶をしてる。  それが終わると、歩きだしたおじさんたちについて、さっきの人はオレを振り返った。気配を感じてそちらを見ると、視線が合う。にこ、と微笑んで、そのまま歩いて行った。  ……なんか。  うーん。なんかすごく、魅力的な感じの人。 「ありがと、凛太くん。行こうか」 「はい」  なんとなく目で追ってしまってたオレは、佐川教授の言葉に気を取り直して、歩き出した。 ◆◇◆ 3/19~ xのべ始めてます♡ 飾り物のΩを妻にした遊び人αが、後で執着する話 💍「飾り物の妻でいいと言ったのはオレなのに」 今4万字くらい続いてます…(っ´ω`c)   「星井悠里 x」で出ると思います。ぜひ♡ ◆◇◆ こんにちは♡ さきほど、頂いてた誤字報告全部直しました。 ムーン、エブリスタ、フジョッシー、pixiv、アルファポリス、カクヨムも全部笑 ぜんぶ開くの大変なので、遠のいていたんですが、 やっぱり誤字は恥ずかしいので、直してすっきり……! 報告くださった皆さまありがとうございました。 それから、凛太の学年と年なのですが、 書き始めた最初、大学二年生19歳で書いてたら、なにかおかしくて、 「大学三年生の20歳」にして頭のなかではすすめて、お酒とかも飲めるようにしていたのに、 本文で年だけは「19歳」のまま直さずに来ちゃってまして! すみません、凛太は大学三年生の二十歳ですので、以後それで……!! (あと、瑛士さんが着たのはイルカのTシャツであってます♡ ペンギン着たのは凛太ですので、そこは直してません(*'ω'*)♡) ありがとうございました♡

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