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167.強い執着?

『それでね、凛太』 「はい」 『――もう、凛太、部屋に戻れるの?』 「あ、はい。さっき教授が、部屋に行きたくなったら送るからって言ってくれて。なんかもういつでも戻っていいみたいです」  瑛士さんと電話したいから、もう戻ろう。  そう思って、一旦電話を切ろうと考えていると。 『じゃあもう、一人になれる?』 「はい。部屋に行きますね」 『――凛太』 「はい?」 『――フロントに来てくれる? 教授と一緒に』 「…………」  ん?  ――ちょっと意味が分からない。 「フロント、ですか?」  なんで??  フロントに、教授と一緒に? …………来て、くれる?  その言葉の指し示すことが、でもすぐには信じられなくて。 「瑛士さん、あの」 『ん?』  くす、と笑う、すごく楽しそうな声色に、今考えてることが本当のような気がしてくる。 「……今、どこ、ですか?」  そう聞いたら、瑛士さんは、あは、と楽し気に声を出して笑ってる。 『凛太のいるホテルのフロント――ごめん、凛太。教授たちを連れて来てくれる?』  瞬きが増えて、なんだか体が、熱くなった。  胸がドキドキしちゃって、どうしたらいいか分からない。 『凛太? 来れそう? 今無理なら待ってるけど』 「あ……っは、い。行きますっ」  何で? ……何で瑛士さんがここにいるんだろう?  え。ほんとにいるの??  オレがよくわからないまま、急いで教授たちのところに戻ると、二人は驚いた顔でオレを見上げた。  ……オレ、今、どんな顔してるんだろ。 「なにか、いいことあった?」  佐川教授がくすくす笑ってそう言って、内海教授もニヤリと笑った。  ――そう見えるのか、と思って、一瞬言葉に詰まったけれど、なんとか口を開く。 「あの……瑛士さんが、フロントにいる、みたいで」  そう言ったら、二人はぽかん、と口を開けてオレを見上げてくる。困って、二人を見つめ返していると。 「……あー、なるほど」  少ししてから、内海教授がそう言って、佐川教授と顔を見合わせる。 「来ちゃったわけか」 「みたいですねぇ……」  二人、なんだかすごく意味ありげに笑っている。 「それで、あの……教授たちと一緒フロントに来てって、瑛士さんが言ってるので、来てもらっても、いいですか? すみません」  そう言うと、二人は面白そうに笑いながら、すぐに立ち上がった。  オレより早く歩きだして、会場のドアを開けた。  その時、ちょうどドアのところで、さっきの彼と出会った。ドアの外で待っていてくれる彼に、ありがとうございます、と伝えて、ドアを抜けた。にっこり綺麗に笑って頷く彼の前を通り抜け、廊下を歩く。フロントの方に足を進めながら、教授たちが笑ってる。 「だから、言ったろ、かなり執着強そうだからって」  内海教授はおかしくてしょうがない、みたいな感じで笑いながら、オレを振り返る。 「怒ってないよな、オレの凛太を泊りで連れてくなんてふざけんな、とか」 「いえ、全然、怒ったりはしてないです……あ。」  そこまで言って、はっと気づいた。  しまった、スマホ、繋げたままだったかも。  二人の早足について歩きながらスマホを見ると、やっぱり通話時間の秒数が増えていく。  スマホを耳に押し当てて、瑛士さん、と話しかけようとしたその時。 「こんばんは」  瑛士さんの声が、直接聞こえた。まだ信じられない思いで顔を上げる。  教授たちを迎えて、にこやかに挨拶している。 「すみません、急いだので、こんな格好で」  瑛士さんはそう言って、少し照れくさそうに眼鏡の位置を直した。  お風呂上りのままだからか、髪はセットしてなくて、無造作でフワッとしてる。  白のVネックTシャツに黒のスラックス。ブルーのカーディガンを羽織っていて、すこし袖をまくってる。カッコイイ腕時計が見える。  眼鏡姿、初めて見た……。  もうなんだか、いろんな意味で、ドキドキして、息を呑むしかない。 「すみません、凛太の部屋に追加で泊まれるようにしてほしいので、手続きしてもらいたいんです」 「ああ、了解。分かりました」  佐川教授が頷いて、瑛士さんと一緒にフロントの受付に向かった。  瑛士さんは、オレには声は掛けず、一瞬目を合わせただけで、行ってしまった。  なんだか胸の音が、騒がしすぎる。いつのまにか、スマホの通話は切られていた。  繋がってた人が。今、ここにいる。  ――なんで、来てくれたんだろう。  ……オレの、ため? ……いや、図々しいか。……いやでも、ここに来てくれる理由って、それは、オレしかない……??  ちょっと頭の中混乱で、あれこれ考えていると、隣にいた内海教授が、くっと笑った。自然とその顔を見上げると、ちら、と視線がオレに向いた。 「凛太の部屋に泊まらなくても、別のもっとでかい部屋とかも、取れるだろうにな」  くっと笑って、内海教授が言って、瑛士さんの方に視線を向けた。  あ、確かに……そういえば。と思っていると。 「勝手に来ておいて、オレ達が取った部屋をキャンセルはさせないって感じか。まあ、そういう感じは、好感持てるな」  くっくっ、と笑い続けながら、内海教授がもう一度、オレを見る。 「ランクが高ければ高いほど、執着は強いもんだぞ。――ぱっと見、隠れていてもな」  気をつけろよな、とニヤニヤ笑いながら、内海教授が言った。  なんだかものすごく、楽しそうに。 (2026/4/25) ◆◇◆ ……みなさん、 くる、とは思ってました、よね?笑( *ˊᵕˋ )。

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