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176.くっついちゃえば。

 瑛士さんは、ふと時計を見てから、オレに視線を戻した。 「そろそろ寝た方がいいよね。ごめん、オレが来たせいで寝不足にさせちゃうね」 「そんなことないです。……嬉しかった、ですよ。瑛士さんの姿を見たとき」 「そっか。なら、よかった」  ふ、と笑い合って、静かに息をついた。 「明日は早くここを出て、途中のパーキングで朝食にしようね。さっきチェックアウトして先に帰るって、伝えておいたから」 「あ、はい。分かりました」 「じゃあ、おやすみ、凛太」 「はい。おやすみなさい」  そう言い合って、布団に入り直すと、目を閉じた。  ……でも、いつもくっついて寝ているから、なんだか落ち着かない。  んー……。  二人で寝たら、確かにせまいだろうけど……なんか、離れているのがすごく、なんか……。  でも、やっぱり瑛士さん、ゆっくり寝てほしいし……。  しばらく悩んでから、そっと目を開けてみると、瑛士さんはもう目をつむっていて動かない。  寝ちゃったのかな……眠れたなら、よかった……。  そんなことを考えながらまた目を閉じた。  なんだかちょっと、違和感は感じながらも、オレも疲れていたのか、いつのまにか眠りに落ちていた。 ◆◇◆  どれくらい寝ていたのか分からないけど。   ぎし、というベッドの音が、耳に届いた  ……?……  そのまましばらくはウトウトしていたのだけれど、その音が気になって、ふ、と目を開けた。  見慣れないベッド。ぼーっとしたまま視線を上げると、瑛士さんと、目が合った。  一瞬で、ここがどこだか思い出した。 「瑛士さん……?」 「……ごめん。動いたから、起こしちゃった?」 「……いえ。瑛士さんも、目が覚めちゃったんですか……?」 「――ん」  微笑んで頷く瑛士さんに。  ……もしかして、寝てないのかな、と、気付く。  オレは起き上がってスリッパをはくと、瑛士さんのベッドの端に腰かけた。 「凛太?」  そのまま、瑛士さんのお布団に、もそもそと入り込む。 「――あの……狭いかも、ですけど……」 「――」 「一緒に、寝たい、です……」  すこし乱れてる浴衣から見える、綺麗な胸筋。  んー、相変わらず、完璧すぎる……。なんて思いながら、その胸の中に、いつも抱き込まれる時みたいに、すっぽりとはまってみた。  瑛士さんは一瞬驚いてたけど、すぐに、少し強く抱きしめてくれた。  ふ、と笑う瑛士さんの、優しい息を感じる。  いつもの瑛士さんの匂いに包まれて、それだけで、ふっと。  心も体も、全部が緩んだ。   「――りんた……」  瑛士さんが、オレの頭に、すりと頬を寄せてくれる。  なんだかゆっくり名前を呼ばれて、くすぐったい。 「狭くても……くっついちゃったら、一緒ですよね……?」 「ふ。そうだね……狭い方が、いいかもしれない」  笑いを含んだ瑛士さんの声が、耳に心地よく響く。  ――ああ。なんか。  ほんの一メートルちょっとの距離が。  離れていると切ないなんて。  くっついたら、こんなに幸せなんて。  ……ほんと、不思議……。 「ありがと。おやすみ、凛太……」 「……ありがとは、オレのセリフです……」 「――オレのセリフだよ」  髪にキスされたのが分かって、さらに、心の中がほんわかする。  背に回した手で、ぴと、と密着する。  途端に、あくびが零れた。  それは瑛士さんも、一緒で。  ふふ、とまた笑みが重なって。 「――おやすみなさい」  そのまま、幸せな気持ちで、眠りについた。  

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