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180.たくさんのメロンパン
朝のサービスエリア。昨日教授たちとも寄ったけど、朝陽のおかげで、空気が軽い。
「朝ごはん食べにいこう」
瑛士さんが車を停めながらそう言った。
売店、たくさんある。うどん、和食、ファーストフード、ラーメンなどなどいろいろ。
そこで目についたのは。
「凛太、何が食べたい?」
「あの……」
「うん」
「あそこのメロンパン、食べてみたいです」
旗がひらひらしている。何かのコンテストで受賞、とか書いてあるメロンパンのお店らしい。
瑛士さんはそちらを見てから、オレを見て、くす、と笑った。
「いいよ、あれね。席、とっといて。ひとつでいい?」
「はい」
頷くとまたくすくす笑って、そのまま歩いて行った。なんであんなにくすくす笑うのだろうか。メロンパン、子供っぽかったかな……??
と思いつつも。瑛士さんに比べたら子どもだよねぇ、オレ。今さらだよね、とぼんやり思いつつ、席を探し始める。
意外に混んでる。ここで朝食済ませる人、多いんだなあ、と思いながら辺りを見回していると。
ちょうど空いた二人席。そこで瑛士さんを見てると、ふと瑛士さんが振り返る。オレを見つけて、頷いてから、メロンパンのお店に入っていった。
メロンパン、普段から食べる訳じゃないんだけど……
受賞したメロンパンは食べてみたい。
鞄を置いて席をとってから、紙コップの水を汲んで、テーブルに戻る。
ふと。瑛士さんを待ってるこの状況が不思議。
メロンパンが食べたい、とか、普通に言ってしまった。
いつも自分の分は自分で買う、のが普通。友達といても、絶対そう。
買ってもらう、とか。普通は無い。
家族がいたらそうかもしれないけど、母さんと出かけられたのは、随分前だし。
席とっといて、と言われて。瑛士さんがオレのも一緒に買ってくれて。……オレはそれを待ってて……。
これは「買ってくれる」っていうお金の話じゃなくて。
自分がすべきことを、何故か瑛士さんに任せてしまっているというか。
――他人には絶対にしてもらわないことを、してもらってしまう、この感じ。
言葉にうまくできないけど。
瑛士さんといると。
家族、という血のつながりはないけど。
他人じゃないって、言ってくれてるみたいな気が、しちゃって。
なんだかくすぐったい感覚に、陥る。
って勝手に家族みたい、とか思って、買ってきてくれるの待ってちゃだめなのでは。
と、はっと気づいて、どうしようかなと思った瞬間。
「はい、凛太。お待たせ」
「あ。 ……え?」
トレイにはコーヒーやヨーグルトがあれこれ乗っている。
それから、目の前に置かれた、紙袋がやけに大きい。
「なんですか、これ」
「見てみたら、めちゃくちゃいっぱい種類があってさ。メロンパン以外にもいろいろおいしそうなのがあってね」
「そうなんですね」
「まずメロンパンがさ、普通のと、北海道のメロンパン、チョコチップが入ってたり、クリームが入ってたり」
「みんなおいしそうですね、どれにしたんですか?」
「いろいろ適当に」
「えっ」
「あと、カレーパンとフルーツサンドと、チーズパンと……」
「瑛士さん、そんなにいっぱい食べるんですか?」
そう言って笑ってしまうと、瑛士さんは楽しそうに笑いながら、オレの前に腰かけた。
「せっかくだから、色んなの、一緒に食べようよ。余ったやつは、おみやげで。竜くんとか、食べる人、いるでしょ」
「それは、いると思いますけど……」
「食べてみようよ、いろいろ」
ということで、急遽、メロンパンの批評会みたいな朝食タイムが始まった。
同じメロンパンでもいろいろ味が違ってて、半分こして食べるのも楽しくて。
少し経つともう、お腹いっぱい。口の中、甘い。
「めちゃくちゃいろいろ食べちゃいましたね」
「そうだね。凛太、どれが好きだった?」
「どれも好きですけど……クリーム入ってる北海道の、すっごくおいしかったです」
「なるほど~」
ふふ、と笑う瑛士さんに、くすっと笑ってしまう。
「メロンパンって言った時、瑛士さんがオレを見て笑ってたので、子どもっぽいと思ったのかなーって思ってたんですけど。瑛士さんもメロンパン好きだったのですね」
「ん? ……ああ。あれは――メロンパン、凛太に似合って可愛いなぁと思ったら笑っちゃっただけで」
「え」
……メロンパン似合う、かな? と首を傾げていると。
「似合うでしょ。なんかまぁるくて可愛い感じ」
「……おれ、丸いですか?」
「そうじゃなくて――なんかふわふわ可愛い感じがね。食べてるところを思い浮かべたら、笑っちゃったんだよね……」
おかしそうに言う瑛士さんに、うーん、とまだ考えていると。
「あと、言っとくけど……こんなにたくさん買ってきたのは、凛太がびっくりして喜ぶ顔が見たかったからで、オレがメロンパンを大好きだから、じゃないよ?」
そんな風に言って、優しく目を細めて、オレをまっすぐに見つめて来る瑛士さん。
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